研究課題/領域番号 |
21K05322
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
市村 徹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (50213012)
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研究分担者 |
竹清 貴浩 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (00545981)
田岡 万悟 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60271160)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロテオミクス / LC-MS/MS / 膜タンパク質 / イオン液体 / iBOPs法 / StageTip法 |
研究実績の概要 |
プロテオーム研究を新たな次元に導くには、あらゆる試料の分析に共通に適用できる標準的なMSサンプル調製方法の確立が重要である。これまでの研究で我々はイオン液体‐アルカリ水溶液の混合溶媒(i-soln)と疎水性マイクロビーズ吸着体を利用する新しいMSサンプル調製法(iBOPs法)を開発した。当該年度の研究では、様々な生物試料から調製した膜内在性タンパク質を対象に、iBOPs法が従来法を凌駕する画期的なMSサンプル調製方法であることを証明する。さらに、プロテオミクスの未経験者でもiBOPs法を容易に遂行できるようにするため、StageTip法と組み合わせたディスポーザブルな試料前処理法を考案し、またこれを用いるiBOPs法の操作プロトコルを創出することを目的とした。 ヒト赤血球から調製した膜タンパク質画分をi-solnを用いて可溶化した。その結果、i-solnはSDSなどの界面活性剤と同等の可溶化率をもつことが分かった。可溶化した膜タンパク質をBOPs法で消化し、LC-MS/MS分析したところ、膜内在性タンパク質であるバンド3やグルコース輸送体を含む多くの膜タンパク質が実際に同定できることが分かった。またその同定性能は、SDSを用いるFASP法やC12-Clを用いるi-FASP法をはるかに上回ることを確認した。 i-soln中の膜タンパク質を疎水性マイクロビーズ担体に吸着させた。この吸着体をStageTipのフィルター上に添加し遠心操作のみでiBOPs法の全工程(溶媒置換、洗浄)が行えるようにした。また、遠心後にStageTipの上下を蓋で密閉することで、同容器内で(連続して)トリプシン消化が行えるようにした。さらにこれらの操作を至適化したプロトコルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験開始の当初、最大の懸案事項はi-solnが脂質膜で覆われた膜タンパク質を効率よく可溶化できるか、にあった。これが可能ならば、その後はBOPs法によって簡単にトリプシン消化が行えるからである。赤血球膜に存在する膜内在性タンパク質を、SDS等の界面活性剤と同等の効率で可溶化できることが確認できたことは、今後の研究の展開に対して大きな成果になったと考える。しかし、異なる生物組織の脂質組成は違うので、今後i-solnが赤血球以外の細胞の膜タンパク質も同様に可溶化できるのかを検討しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、異なる生物組織の脂質組成は違うので、i-solnが赤血球以外の細胞の膜タンパク質も同様に可溶化できるのかを検討する。このため、originが異なる様々なヒト癌細胞を細胞バンクから購入し、これらの膜タンパク質を対象にしてiBOPs法の性能を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた物品が、不要になった。来年度の研究遂行には、多くの物品(消耗品)が必要なので、今年度に生じた予算は翌年度分の予算と合わせてこれらの購入に使用する。
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