研究課題/領域番号 |
21K05323
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
八島 未和 (松島未和) 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 講師 (60527927)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水田土壌 / 肥沃度 / 稲わら / リグニン / NSC / 高濃度二酸化炭素 / ICP |
研究実績の概要 |
大気CO2濃度の増加ペースはとどまらず、世界の主食コメの生産拠点である水田生態系にも影響がおよぶ。これまで、高CO2環境が稲わらに含まれる非構造性炭素率を増加、リグニン含有率を低減、36時間で分解する炭素量を50%以上増加することが判明している。この稲わらの変化は長期的に見ると地力窒素供給や炭素貯留といった水田土壌有機物特有の機能に対しても影響すると考えられるが、関連知見は圧倒的に不足し、将来予測モデルの準備も不十分である。本研究では高CO2環境下で生産される多品種の稲わらがすきこみ後に土壌有機物に与える影響を評価するため、微生物の『食べ物』としての稲わらの質に注目し、将来の高CO2環境下における地力窒素の維持、安定的なコメ生産、炭素貯留能力の最大化を実現する水田土壌有機物の管理方法創成を目的としている。 初年度の2021年度においては、高濃度二酸化炭素環境下で生産された多品種の稲わらに含まれる各種元素をICP-OESを用いて測定した。その結果,マンガンやマグネシウムなど一部の元素に対して高CO2が有意な影響を及ぼしていることが判明した。現在,これら元素の含有率と分解性の関連について統計解析を実施している。さらに,土壌における残渣の分解実験を行い,地力窒素(窒素無機化)に与える影響を調査した。その結果として,試験期間を通して窒素の無機化に対しては高CO2の有意な影響は見られず,品種による影響が大きいことが分かった。一部の品種では高CO2環境下においてより高い土壌の窒素無機化が生じており,鋤き込み後の地力に対して高CO2が何らかの影響を与えている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種元素の稲わら中の含有量の測定は終了している。現在その結果を解析し,論文執筆を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2022年度では,土壌培養試験を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍が継続し,学会発表に赴く機会がなかったため,旅費を使用しなかったことと,1年目の実験について当初の予定よりも肥沃を縮減できたことより,次年度の使用額が生じた.2022年度では,残額を利用して,微生物相への影響を調べるため,次世代シークエンスなどの外注を実施予定である.
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