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2022 年度 実施状況報告書

水田土壌の生物的鉄酸化反応ー微好気性鉄酸化細菌の潜在的役割の評価

研究課題

研究課題/領域番号 21K05326
研究機関名古屋大学

研究代表者

渡邉 健史  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60547016)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード鉄酸化細菌 / 水田
研究実績の概要

本研究では、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌(以下、微好気性鉄酸化細菌)の分離菌株を用いた培養実験による鉄酸化活性の評価と、室内での土壌培養実験による微好気性鉄酸化細菌の動態の解析から、水田土壌での微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定することを目指す。本年度は、昨年度検討した室内での土壌培養実験を引き続き行い、湛水水田土壌を落水したときの微好気性鉄酸化細菌群集の動態を解析した。また、微好気性鉄酸化細菌分離株を用いて、鉄酸化活性を測定する予備実験を行った。
水田土壌に粉末状にした稲わらを混合し、ガラスシリンジを用いて30℃、暗所で4週間湛水培養した。その後、培養温度を12℃、30℃、37℃に変更して下方より排水することによって落水状態とし、土壌中の活性2価鉄量を経時的に測定した。その結果、湛水培養により活性2価鉄量は乾土1gあたり2.5 mgまで増加した。一方、落水後は、2週間経過してもほとんど減少しないか、わずかに減少したのみであった。落水後の微好気性鉄酸化細菌群集の動態を16S rDNAを対象とした定量PCRにより解析した結果、16S rDNAコピー数は落水後5日(30、37℃)、または17日(12℃)の間に10-90倍増加し、低い温度ほど増加率が大きかった。以上より、微好気性鉄酸化細菌群集は、落水後、活性2価鉄量の変化が少ない短期間で活発に増殖し、その応答は温度によって異なることが明らかとなった。
また、水田より分離した微好気性鉄酸化細菌を対象に、液体培地中での鉄酸化活性を測定することを試みた。結果、十分な細胞数を測定に用いることで非生物的な鉄酸化反応を上回る鉄酸化活性を測定することができることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、微好気性鉄酸化細菌分離株の鉄酸化活性を測定し、土壌培養実験の結果と併せて土壌中における微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定することを計画していたが、分離菌株の鉄酸化活性の測定が予備実験までとなり、予定していた計画を全て完了することができなかった。

今後の研究の推進方策

現在、分離菌株の鉄酸化活性の測定途中であり、活性測定を引き続き行う。その結果と土壌培養実験の結果を併せて、水田土壌落水時の微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定する。
また、当初の計画の一つである、落水時の鉄酸化反応により形成した非晶質鉄酸化物量とそこに含まれる窒素やリン量、また土壌中の微好気性鉄酸化細菌群集の動態との関係を探り、水田土壌における鉄の酸化還元やそれに伴う物質動態における微好気性鉄酸化細菌の潜在的な役割を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していた分離菌株の鉄酸化活性の測定が予備実験までとなり、予定していた計画を全て完了することができなかったため、次年度へ繰り越す必要が生じた。繰越額は、翌年度分の助成金と合わせて、引き続き分離菌株の鉄酸化活性の測定のために使用するほか、翌年度の研究計画である落水時の鉄酸化反応により形成した非晶質鉄酸化物量とそこに含まれる窒素やリン量、また土壌中の微好気性鉄酸化細菌群集の動態との関係を探るための実験に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Dynamics of Gallionella-related iron-oxidizing bacterial community in paddy field soil2022

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, T., Naruse, T., Nakagawa, K., Ban, Y., Yoshida, T., Kato, T., Namikawa, M., Takahashi, T., Nishida, M., Katayanagi, N., Agbisit, R., Llorca, L., Hosen, Y., Murase, J., Asakawa, S.
    • 学会等名
      22th World Congress of Soil Science (WCSS)
    • 国際学会
  • [学会発表] 水田土壌落水時の微好気性鉄酸化細菌群集の鉄酸化ポテンシャルの推定2022

    • 著者名/発表者名
      山口真輝・森小百合・浅川晋・渡邉健史
    • 学会等名
      2022年度日本土壌肥料学会中部支部・中部土壌肥料研究会例会
  • [学会発表] ブルキナファソ鉄過剰障害発生水田の細菌群集構造の特徴2022

    • 著者名/発表者名
      渡邉健史・加藤健斗・川口晃平・尾賀俊哉・伴佳典・Otoidobiga Cecile Harmonie・Sawadogo Adama・Wonni Issa・Ouedraogo Leonard・Zongo Jean Didier・Dianou Dayeri・浅川晋
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2022年度東京大会

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公開日: 2023-12-25  

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