研究課題/領域番号 |
21K05328
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田中 壮太 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (10304669)
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研究分担者 |
森塚 直樹 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (10554975)
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50211800)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌肥沃度 / ショウガ病害 / 高知県 / 土壌環境の空間変異 |
研究実績の概要 |
高知県四万十町は我が国のショウガ栽培の中核地域であり、主に水田転換圃場においてショウガが栽培されているが、病害発生が深刻な問題である。本研究は、中山間地における圃場の多様な立地環境と病害発生との関連を明らかにすることを目的とし、これまでに実施してきた四万十町との共同研究を発展させるものである。研究開始前の2020年度収穫後に、10圃場において土壌断面調査と試料採取を行なった。初年度である2021年度には、ショウガ栽培中の6月~7月に病害発生状況に留意して、11圃場において土壌試料を採取するとともに、生育・発病状況の聞き取り調査を行なった。12月~2022年1月に8圃場において土壌断面調査と試料採取を追加実施した。土壌断面調査では、傾斜地における水田圃場整備の際の土壌移動・盛土により、圃場内でも土壌環境に空間変異が生じていることを踏まえて、圃場内の山側と谷側における土壌断面形態・特性の差異を調べた。また、貫入式土壌硬度計を用いた土壌深さ・硬さの圃場内分布のマッピングにより土壌環境の空間情報を取得した。採取した土壌試料について、pH、EC、全炭素、全窒素、可給態リン、交換性塩基、粘土鉱物組成、全元素含量、リン酸吸収などの化学や透水性や保水性などの物理性や、微生物叢や青枯れ病菌および根茎腐敗病菌密度を分析した。生産者は排水が悪い圃場で病害が発生しやすいと認識していることから、土壌断面形態・特性に基づいて集中調査圃場を選定し、2022年3月末に1圃場に土壌水分センサーを埋設した(さらに4月に1圃場で埋設予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌断面調査や土壌深さ・硬さの圃場内分布のマッピングは順調に実施できた。現在までに取得した土壌データを解析したところ、四万十町内のショウガ圃場は、立地・土壌環境に基づいて、1)鬼界カルデラの約7300万年前の大噴火に由来する降灰堆積物の影響を受けた圃場(四万十町中心部の窪川地区周辺)、2)傾斜地に立地し、上側には水田が存在し、降灰堆積物の影響は見られない圃場、3)傾斜地に立地し、上側の土地と斜面により接続し、降灰堆積物の影響は見られない圃場に区分できる可能性が高いことが分かった。一方、当初計画では、土壌環境と病害の発生時期の関係を調べるため、同一の圃場で定期的 (消毒前、 栽培中、 収穫後) な土壌試料採取を予定していたが、コロナ禍と天候不順により、生産者との連携が上手くいかず実施できなかった。しかし、6月~7月頃の作土で病原菌が検出されなかったことから、7月から8月の台風などによる多雨時に圃場の排水が追い付かず病原菌が蔓延する原因となっているとの仮説を立てることができた。そのため、2022度に十分取り戻すことが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
土壌断面調査や土壌深さ・硬さの圃場内分布のマッピング、土壌試料分析を継続し、立地・土壌環境に基づくショウガ圃場の区分を推進する。土壌養分や菌叢、病原菌の経時変化の評価を実施することにより、病害伝播メカニズムの解明を試みる。加えて、集中調査圃場において土壌水分モニタリングを行ない、中山間地における圃場の多様な立地環境と病害発生との関連を明らかにしていく。一方で、養水分量に着目したポット栽培試験を実施し、ショウガの生育の健全性の面から、病害の受けやすさを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、同一の圃場で定期的 (消毒前、栽培中、収穫後)な土壌試料採取を予定していたが、コロナ禍と天候不順により実施できず、残額が生じた。一方で、得られた結果から、土壌水分が病害発生のキーワードであると考えられたことから、土壌水分条件を変えたショウガのポット栽培試験の実施が必要であると判断された。そこで、ポット試験に必要な土壌溶液採取装置の購入に充てるために、残額を今年度に繰り越すことにした。
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