研究課題/領域番号 |
21K05331
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
齋藤 明広 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (50375614)
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研究分担者 |
道羅 英夫 静岡大学, 理学部, 教授 (10311705)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Lysobacter / 土壌細菌 / 微量増殖因子 / キチン / メチオニン / Streptomyces / 完全ゲノム配列 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,キチン添加土壌での非栄養要求型キチン分解細菌 (Streptomyces属)からメチオニン要求性キチン分解細菌 (Lysobacter属) への遷移 (Iwasakiら2020) の仕組みを解明することを目的としている。2021年度は,メチオニン要求性のキチン分解細菌Lysobacter sp. 5-21a株(Iwasakiら2020)が,特定の微量増殖因子の要求株であること、また,同株の全ゲノム塩基配列を決定することで,5-21a株がメチオニンおよび特定の微量増殖因子に対する栄養要求性を示す遺伝的背景を推定することができた。 2022年度は5-21a株について分類学的な検討を進め,新種であることを示すことができた。また、5-21a株で見出された微量増殖因子要求性の性質は、Lysobacter属の他の種にも観察される性質であることを示した。 対峙培養によって,5-21a株の増殖を促進する効果を示す細菌株について、当該微量増殖因子の生産性について、代表的な土壌細菌と比較解析を行った結果、特定の属に属する細菌株において、当該微量増殖因子の生産量がケタ違いに高いことが判った。 一方,2021年度に確立した土壌における当該微量増殖因子の定量方法を用いて,キチン添加土壌での当該微量増殖因子の含有量の継時的変化を調べることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に遅れがあると判断された事項について、2022年度に完了することができた。2022年度に計画していた事項のすべてに着手することができているが、一部、進捗が遅れている。一方、2021年度に決定した5-21a株の全ゲノム塩基配列の情報から、当該細菌株が新種であることが示唆された。これについては当初の計画の中で予期していなかったことであるが、新種提唱すべく2022年度中に必要なデータを整えることができた。また、その他の予期していなかったこととして、研究の過程で、他の微量増殖因子を要求するキチン分解細菌株と、その増殖を促進する非キチン分解細菌株を見出すこともできた。 これらの状況を総合的に勘案し、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 当該微量増殖因子を生産する細菌株による、5-21a株に対する増殖促進効果について、その要因が当該微量増殖因子の生産性にあることを示すため、①当該微量増殖因子の生産量が高いことが認められた細菌株が属する細菌属において、当該微量増殖因子の生産性の高さが広く観察されるかどうかを調べる。また、②当該微量増殖因子生合成遺伝子の破壊株と相補株を作成し、5-21a株の増殖を促進する効果が、当該微量増殖因子によるものであるかどうかを明らかにする。 (2) キチン添加土壌における細菌群集構造解析の試料点数を増やし、それらの結果をもとに、当該微量増殖因子の含有量の変化と相関を示すOTUを探索する。 (3) キチン添加土壌について、当該微量増殖因子の生合成遺伝子やトランスポーター遺伝子の転写量を探るべく、メタトランスクリプトーム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、予期しなかった実験結果に基づいた研究事項を優先的に実施したため、その分、もともとの計画の研究の進捗が遅れた。その結果、その分の次年度使用額が生じた。次年度使用額については、進捗が遅れている研究を進捗させるなかで使用する。
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