研究課題/領域番号 |
21K05334
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
唐澤 敏彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, グループ長補佐 (70414753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 混植 / カバークロップ / 優占性 / 根圏 / 養分獲得能 |
研究実績の概要 |
農業機械の進歩などを見越して、従来、作業性に難があるとされてきた混植(複数の作物を混ぜて植える農法)が注目され始めている。これらは、おおむね20~30年先の実用化を目指している。カバークロップの場合、複数の作物を別々に収穫する必要がないことから、農業機械の開発を待たずに実用化が可能で、他作物に先行して混植が普及し、他作物の新農法への転換に貢献できる可能性がある。本研究では、様々な圃場条件で混植するカバークロップの養分獲得能や優占性を明らかにすることを目指す。このため、各種作物の混植による根圏の共有が両作物の養分吸収に及ぼす効果を個体レベルで示した上で、養水分や光の競合程度、根圏共有の有無などが、各作物種の優占性や混植した群落内の養分吸収機構に与える影響を明らかにすることを目的とする。 2021年度は、個体レベルでの混植の効果が高い作物の抽出と効果発現に適した土壌条件等の検討の中で、特に、土壌の窒素肥沃度の影響を検討した。具体的には、窒素施肥量を変えたポットで、各種マメ科(窒素固定能をもつベッチ、ルーピン、クロタラリア、キマメ)とそれ以外のカバークロップを混植し、窒素固定能が高まってトータルの窒素吸収量が多くなる作物種の組合せを抽出するとともに、その効果が大きくなる土壌の窒素レベルを検討した。その結果、窒素レベルが高くない場合、クロタラリアなどのマメ科とマメ科以外の作物を混植すると、マメ科作物の根の根粒機能が高まり、両方の作物をあわせた窒素吸収量が単作よりも多くなる可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題では、①個体レベルでの混植の効果が高い作物の抽出と効果発現に適した土壌条件等の検討、②群落における混植の効果や各作物の優占性の解明、を行うことを計画している。①については、土壌の窒素レベル、リン酸レベルの違いなどが混植した作物の生育応答に及ぼす影響を調べることとしており、本課題の初年目である2021年度は、このうち、窒素レベルを変えて、混植した各種カバークロップの生育や養分吸収量を調べることを計画していた。 2021年度は、夏作のカバークロップの中から、クロタラリア、キマメ、ソルガム、ソバ、ヒマワリについて、全ての2作物の組み合わせで窒素レベルを3段階にした条件での混植栽培を計画通り実施した。また、冬作のカバークロップの中から、ヘアリーベッチ、ルーピン、エンバク、イタリアンライグラス、アブラナについて、全ての2作物の組み合わせに対して、窒素レベルを3段階にした条件での混植栽培を計画通り実施した。各作物の生育については、発芽が悪かったキマメを除き、計画通り、データを得ることができた。また、夏作、冬作ともに、一部のマメ科作物について、根粒重のデータも計画通り得ることができた。 一方で、全ての組み合わせで混植した各作物について、元素分析を行い、混植がそれぞれの作物の養分吸収に及ぼす影響を調べる予定であったが、冬季の栽培となったヘアリーベッチ、ルーピン、エンバク、イタリアンライグラス、アブラナについて、分析用の試料は確保できているものの、分析が遅れ、2022年度に分析することとなった。以上のことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①個体レベルでの混植の効果が高い作物の抽出と効果発現に適した土壌条件等の検討については、2022年度は、計画通り、リン酸施肥レベルを変えた条件で、2021年度と同様のポット試験を実施する。2021年度に発芽が良くなかったキマメは、苗を作って植えることを検討する。また、②群落における混植の効果や各作物の優占性の解明については、2021年度の結果を参考にしつつ、栽植密度の影響について、窒素レベルを変えて調べる試験を実施する。また、2021年度に未実施であった2021年度栽培の冬作カバークロップについて、元素分析を行い、養分吸収量を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
冬作カバークロップについては、収穫調査をしてから年度末までの期間が短かったことと、予定していた研究補助員を確保することができなかったことから、一部の分析が未実施となった。2022年度には、研究補助員を確保できる見込みで、それを活用して、2022年度の計画と2021年度に実施できなかった分析を進める。
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備考 |
唐澤敏彦. 2022. イネ科&マメ科の混播でわかること. 現代農業5月号, 62-65.
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