研究課題/領域番号 |
21K05336
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
池田 新矢 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 教授 (60326270)
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研究分担者 |
菅原 雅之 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90742776)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 清酒醸造 / 生もと系酒母 / 乳酸菌 |
研究実績の概要 |
自然の乳酸菌を利用した生もと系酒母の製造過程における微生物の動態を明らかにするため、令和3年度では上川大雪酒造株式会社の碧雲蔵で製造された3つの生もと系酒母を対象とし、それらの微生物叢を調査した。製造過程にある酒母は経時的に採取し、希釈平板培養法による生菌数調査、HPLCによる成分(エタノール、乳酸、有機酸)分析、および次世代シーケンサーを用いた16S rRNA解析による細菌種組成調査を実施した。 その結果、いずれの仕込みにおいても製造初期 (1-6日目)に酒母1gあたり10の5-6乗程度の細菌が検出され、共通して米麹由来のStaphylococcus属細菌が優占していた。製造中期 (7-14日目)には、予想通り乳酸菌の旺盛な増殖と酒母中の乳酸の蓄積、および清酒酵母を添加後 (15日目以降)のエタノール濃度上昇による乳酸菌数の極端な減少が観察された。一方で、製造中期に優占した乳酸菌の種類には仕込みごとに相違が認められ、一般的な生もと乳酸菌とされるLactobacillus sakeiは検出されなかった。加えて、生もと系酒母製造過程で一般とされているLeuconostoc属乳酸球菌からLactobacillus属乳酸桿菌への遷移は1回の仕込みでのみ認められ、1種の乳酸球菌のみが優占するケースと、異なる2種のLeuconostoc属乳酸球菌が優占するケースも認められた。以上より、1カ所の酒造場においても生もと系酒母製造における微生物叢形成モデルは多様であることが明らかとなった。 また、1種のLeuconostoc属乳酸球菌のみが製造中期に優占した酒母特異的にアルコール耐性乳酸菌が検出された。したがって、製造中期における乳酸桿菌への遷移あるいは優占する乳酸菌種の違いが、清酒醸造に不適切とされるアルコール耐性乳酸菌の繁殖抑制に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに生もと系酒母において優占する微生物を明らかにし、予定を前倒して優占細菌の単離まで進めることができたため、本研究課題は順調に進展していると考えられる。R4年度前半までを予定していたRNA-Seq解析による網羅的遺伝子発現解析は、今後慎重に条件検討を進めて実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
生もと系酒母製造過程において優占する乳酸菌が共存する清酒酵母に与える影響を培養試験、および遺伝子発現解析で明らかにしていく。また、単離細菌の栄養資化性と抗菌性の調査から、微生物叢形成に対する影響を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた設備備品である高性能パソコンを当初の計画より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。この費用は次年度のRNA-Seq解析費用への補填と消耗品購入に企てる予定である。
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