研究課題/領域番号 |
21K05337
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 正人 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00377649)
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研究分担者 |
竹野 誠記 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30422702)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コリネバクテリウム グルタミカム / ビオチン排出輸送体 / ビオチン取り込み輸送体 |
研究実績の概要 |
【目的変異株の選抜法】想定される未同定のビオチン排出輸送体を“BioE”と命名。その欠損変異株の取得を試みる。選抜方法は以下の通り。出発菌株は、当ラボで育種したコリネ型ビオチン生産菌(ビオチンをデノボ合成できるように育種した菌株)。本株でビオチン取り込み輸送体BioYを破壊すると、ビオチンを自ら合成できるのにビオチン要求性となる。この独自知見を応用。具体的には、そのBioY破壊株から再びビオチン非要求性になったサプレッサー株をポジティブに選抜。その中から、次の3要件を満たす菌株を二次選抜。① 生育にビオチンを要求しない ② ビオチンを分泌しないか分泌量が低下している ③ 細胞内に高濃度のビオチンが蓄積している。この表現型は、同株がBioEの欠損株と考えた場合に想定される表現型である。
【目的変異株候補の取得】変異処理にて、まず、上記①の要件を満たす変異株を多数取得。次いで、これら変異株の中から②の条件を満たす菌株を数株選抜。
【BioY破壊株の細胞内ビオチンプールの測定(予備実験)】ビオチン生産菌は当然ながらビオチンを要求しないが、そのBioY破壊株は再びビオチンを要求するようになる。この現象は、ビオチン生産菌が細胞内にビオチンを蓄積するも、BioY破壊株では蓄積していないとしなければ説明がつかない。そのことを確認するため、その両菌株をビオチン前駆体(KAPA)添加条件下で生育させ、得られた菌体内のビオチンプールをバイオアッセイにて測定した。その結果、予想通りであることを確認した。すなわち、BioY破壊株ではビオチンを排出してそれを再回収できないため、生育に必要なビオチン濃度を細胞内に保てないとの我々の仮説を裏付けるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的変異株の選抜には、上述の①~③の3要件を満たす必要がある。今年度は、①と②の条件を満たす変異株が取得できることまで確認した。さらに、本選抜のアイデアは、ビオチン取り込み輸送体BioYの破壊株が再びビオチンを要求するようになる理由がビオチンを排出してそれを再回収できないためとする仮説に基づくが、細胞内ビオチンプールの測定により、その仮説を裏付ける結果が得られた。従って、選抜方法の妥当性と今後の方向性を明確にできたと判断できるため。
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今後の研究の推進方策 |
1. 今年度取得した候補株の中から、3要件全てを満たす菌株を二次選抜する。 2. 目的候補株が得られたら、親株との比較ゲノム解析を行い、候補株の有する全変異を抽出する。 3. 抽出された変異の中から、原因変異を特定する。 4. 変異処理法では、多数の変異の中から原因変異を特定する必要があるが、それが困難になる可能性があるため、自然変異によっても目的候補株の取得を試みる。
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備考 |
研究者総覧 池田正人 http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.uhLNPUkh.html
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