研究課題
常温性のシアノバクテリアであるSynechococcus elongatus PCC 7942 (以下、PCC7942)の生育上限温度は43℃とされ、これ以上の高温条件ではPCC7942の細胞は分裂異常によりフィラメント状にとなり細胞増殖は抑制される。本研究では細胞を亜致死高温条件に曝しながら継代培養するSerial transfer培養法での長期間の適応進化実験を実施することで、既知の生育限界温度を超えた高温適応進化株を作出し、その生理的性質やゲノム上にどのような変異が生じたかを解析した。適応進化実験の初期段階に比べ、劇的な生育限界温度の上昇は見られなくなってきたが、全ゲノムリシーケンス解析の結果、ゲノムDNA上の突然変異の数は累積的に増加していた。一方、同じ期間30℃で継代培養している親株には同等の数の突然変異の蓄積は見られなかった。コロニー集団内において優先化する新規突然変異の数については、選択圧のある培養系におけるボトルネック効果の影響も考えられるが、高温培養系と常温培養系では新規変異の蓄積速度の違いは明らかであった。高温適応株において累積した突然変異がゲノム上の特定領域に集中するかどうかを検証をしたが、現時点ではそのようなホットスポットは見られていない。またアミノ酸置換を伴う突然変異が起きた遺伝子については、高温性のシアノバクテリアであるThermosynechococcus elongatus BP-1の相同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列と比較し、同じアミノ酸に変異したのかどうかを検証したが、そのような部位は見られなかった。これらの結果は本実験で新規に見出された突然変異が未知の高温耐性・高温適応の機構と関わることを示唆している。
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