研究課題/領域番号 |
21K05339
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伏見 圭司 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命准教授 (80787581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光制御機構 / 光受容体 / 光感知 / UV-Vis スペクトル / 真菌類(カビ・キノコ) / 生活環 / 分化誘導 / 子実体形成 |
研究実績の概要 |
カビ(Aspergillus nidulans(モデルカビ、An)、A. oryzae(コウジカビ、Ao))およびキノコ(Coprinopsis cinerea(ウシグソヒトヨタケ、Cc)、Schizophyllum commune(スエヒロタケ、Sc))に由来する光受容体・フィトクロム(FphA)の遺伝子を His-tag 融合タンパク質として発現させるために、pET28a ベクターに導入した。取得したプラスミド DNA をビリン色素合成系を保有する大腸菌内で発現後、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、UV-Vis 分光光度計による吸収波長特性の解析を試みた。AnFphA および AoFphA は赤色光 / 遠赤色光感知型光受容体として機能することを確認できたが、CcFphA および ScFphA については発現がみられず、その機能を確認することができなかった。そこで、alphafold2 によって各光受容体の分子モデリングを行い、立体構造を形成しない N-末端側の可変領域を除去したコンストラクトを作製した。現在、再度、分光光度計による吸収波長特性の解析を試みている。 一方、モデルキノコであるウシグソヒトヨタケのゲノムには、光感知機能をもつ遺伝子(CcPhotolyase、CcDst-1、CcDst-2、CcWC2)がアノテーションされていた。先行研究において、これらの遺伝子破壊株は子実体を正常に形成できないことが報告されているが、その分光学的な解析は行われていなかった。加えて、CcFphA と子実体形成を紐付ける遺伝学的な研究報告はなかった。 現在、カビ、キノコに由来する各 FphA だけでなく、モデルキノコであるウシグソヒトヨタケの CcPhotolyase、CcDst-1、CcDst-2、CcWC2 にも焦点を当てた解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部のフィトクロムについては発現がみられなかったため、分子の設計を見直す必要があった。また、モデルキノコであるウシグソヒトヨタケにおいては、フィトクロム以外の複数の光受容体の遺伝子の存在が確認された。これらの光受容体の機能については、先行研究で遺伝学的な解析は行われていたが、分光学的な解析は行われていなかった。本研究が目指すのは、「カビ」と「光」の関係だけに留まらず、「キノコ」と「光」の関係に迫ることである。そのため、今回の調査で明確にされた課題(フィトクロム以外の複数の光受容体の分光学的な解析)に対して、取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
分子モデリングによって再設計した各フィトクロムに加えて、モデルキノコであるウシグソヒトヨタケに由来するフィトクロムの以外の光受容体の分光学的な解析を行う。これらの光化学的特性(吸収波長領域、光変換、暗反転の特性)を明らかにする。 これらの成果をまとめ、年度内に学会報告、論文執筆を進めていく。
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