研究課題/領域番号 |
21K05345
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
加藤 伸一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (60346707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 硫黄代謝 / トレーサー |
研究実績の概要 |
大腸菌MC4100株を種々の培地組成にて液体振とう培養し、得られた無細胞抽出液にL-[35S]システインをトレーサーとして加えた。クロラムフェニコールを添加して翻訳を阻害した条件下で37℃、1時間インキュベートした後に試料をSDS-PAGEにより解析したところ、S-スルフヒドリル化されることにより硫黄の転移反応に関与すると考えられるタンパク質バンドがオートラジオグラフィーにより複数検出された。培養条件によりオートラジオグラフィーの結果が異なることから、これらのS-スルフヒドリル化タンパク質は特異的に発現誘導されるものと考えられた。そのうちの一つである分子質量16kDaのバンドはIscUタンパク質であることが判明したため、当該遺伝子をPCRにより調製し大量発現系を構築している。一方、プロテインシークエンサーを用いたエドマン分解では同定することのできないタンパク質もあった。その原因として、試料タンパク質がいずれも極めて微量であること、また、タンパク質のN末端がアセチル化やホルミル化によって修飾されている可能性も考えられた。この発現系より得られた組換えIscUタンパク質について、L-[35S]システインと大腸菌システインデスルフラーゼIscSを用いた硫黄転移系を用いてin vitroで硫黄受容能を解析した結果、35S放射標識量が経時的に増大していることが明らかになった。この結果から、IscUタンパク質は本菌株が生成する含硫化合物の合成初期段階において硫黄を供給する役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
S-スルフヒドリル化されるタンパク質は概ね期待通り検出することができた。しかしながら、発現量が微量であったため同定することが困難であった。また、新型コロナウイルス感染症対策により研究活動に時間的な制限が生じた時期があり、研究計画全般に若干の遅れが認められる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で未同定のS-スルフヒドリル化タンパク質については、従来のプロテインシークエンサーによるN末端構造解析に加え、質量分析計を用いたペプチドマスフィンガープリンティングもあわせて実施し、これまでの同定作業を継続していく。また、これらのタンパク質で検出されるS-スルフヒドリル化について、その機構の解明を目指し、まずはL-システインおよびシステインデスルフラーゼ存在下の反応条件の最適化を行い、評価のための基盤を確立する。
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