研究課題/領域番号 |
21K05346
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
小柳 喬 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20535041)
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研究分担者 |
高木 宏樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (80616467)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / ゲノム解析 / Latilactobacillus sakei / 次世代シーケンサー / 種内系統解析 |
研究実績の概要 |
乳酸桿菌 Latilactobacillus sakei (旧種名:Lactobacillus sakei、ラクトバチルス・サケイ)は発酵ソーセージや発酵肉、発酵野菜漬物(ザワークラウト等)、清酒酒母およびいずしなど、世界中の様々な食品から分離される広範分布性の乳酸菌である。令和3年度(初年度)は、様々な食品由来の本菌種に属する32菌株群において、全ゲノム解析により種内系統の明確化と整理をおこなった。そこで本年度は、前年度の解析で明確になった 3 つのクラスターに遺伝的に分かれる種内系統について、代謝的特性についても同様にクラスター毎に分類されるかを精査した。API 50 CH キットを用いて糖発酵能を株間で比較したところ、全ゲノムSNP結合配列による系統解析におけるクラスタリングとは一致しなかった。また、L. sakei に一般的にみられる代謝系であり低pH耐性に関わると考えられるオルニチン生成能(アルギニンデイミナーゼ経路により生成)についてもクラスター毎に一致する傾向は見られず、分離食品の酸性環境の違いへの適応を示唆するような傾向はみられなかった。全ゲノムSNP結合配列においてみられた明確なクラスターは、何らかの表現形質にも影響を及ぼしていると考えられ、今後さらなるメタボロミックな解析や実際の発酵食品製造への各菌株の使用による官能特性への影響などを精査し、3クラスターの遺伝系統の有する種内特性を明確化したいと考えている。また、令和4年度は以上のゲノム解析の成果について原著論文1報にまとめ投稿し、すでに受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、32 菌株の L. sakei の全ゲノム比較により明確化された3つのクラスター(種内系統)について、代謝特性により同様に明確に分類されるかを精査した。全ゲノムSNP結合配列の解析結果と代謝特性が一致する結果は現段階では得られていないが、今後解析代謝物の対象をさらに増やすことによって全ゲノム解析結果と一致をみる代謝物のカテゴリーが発見される可能性も十分に考えられる。今後も、継続してL. sakei の代謝プロファイルによる種内系統の整理を進め、ゲノム解析結果と突き合わせたいと考えている。また、上記 32 菌株の全ゲノム SNP 結合塩基配列を使用し種内系統を整理した成果を既に学術雑誌1報に投稿・受理済みであり、研究成果発信の意味からもおおむね順調に計画は進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
L. sakei 32菌株のSNP結合配列をもとにしたゲノム解析成果を、既に報文としてまとめたことで、菌株依存的なゲノムの特徴分けについては一つの成果を得た。今後はゲノム性状により振り分けた種内系統が、どのように表現型に影響を与えるかについて最終年度で何らかの特徴を代謝面からも解明したいと考えている。また、甘酒およびいずしといった実際の伝統発酵食品に種菌(発酵スターター)として使用することにより蓄積代謝物の濃度変化や揮発性香気成分の変化などの官能に与えうる影響が変化する可能性も考慮し、発酵食品の製造といった食品レベルでの実験も行う予定である。上記研究を通し、それぞれの発酵原料に適した食品向けのL. sakei種菌利用のためのゲノム選抜基盤の提示にも一層近づきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム解析および代謝物解析に必要な消耗品類に計上した物品費について、必要分を年度内に計上したが、3044円の残額が発生した。本残額については、翌年度の助成金にて使用する同様の消耗品類と合わせての購入に使用する予定である。
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