研究課題/領域番号 |
21K05350
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
安部 智子 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (40553524)
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研究分担者 |
横谷 香織 (富田香織) 筑波大学, 生命環境系, 講師 (10217531)
加藤 浩 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 助教 (30378327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / 乾燥耐性 |
研究実績の概要 |
Nostoc sp. HK-01 の藻塊が乾燥していく過程でどのような代謝系がいつ誘導されるかを調べるため、次の実験を行った。未乾燥および乾燥後の藻塊から抽出したタンパク質を電気泳動に供し、分離した。水溶液中で超音波破砕して遠心分離することで可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分に分画し、それぞれの画分を別々に電気泳動に供することによって鮮明な電気泳動像を得られることをこれまでに明らかにしていたため、画分ごとに分けて供する方法を用いた。得られた電気泳動像を画像解析ソフトを用いて比較し、藻塊水分量の減少に相関して増加するタンパク質をいくつか検出した。有意な増加が確認されたタンパク質について、ペプチドマスフィンガープリンティング (PMF) 法を用いてその遺伝子を同定した。同定された遺伝子の半分以上は機能未知のものであった。同定に成功した遺伝子は定量PCRを用いて、詳細に発現パターンを解析することとした。 経時的に藻塊の湿重量を測定し、乾燥重量と比較することで乾燥経過時間と菌体中の水分量の関係を明らかにした。水分量50%時、30%時に藻塊から抽出したRNAをテンプレートとして、PMFで同定した遺伝子の定量PCRを行った。その結果、乾燥時に発現量が増加する遺伝子には、水分量の減少に比例して発現量が増加する遺伝子、乾燥初期に発現量が増加してもその後すぐに発現量が減少する遺伝子、乾燥初期では発現量は変化せず乾燥後期で発現量が大きく増加する遺伝子の3パターンがあることを明らかにした。乾燥後期で発現量が著しく増加した遺伝子に関して、今後機能解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質および遺伝子の解析においては、PMF法で同定した遺伝子に関して、乾燥過程における水分量に対する発現パターンを定量PCRで詳細に解析するまでに至り、当初の計画以上に進展した。しかし、低分子化合物の解析においては、異なる乾燥状態の藻塊から抽出した試料を用いてHPLCによる分離パターンを比較するところまでを計画していたが、低分子の抽出の検討に時間がかかり、HPLC法により分析するまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PMFで同定された遺伝子の中には、低分子化合物の合成に関わるものもいくつか見られた。乾燥過程でこれらの発現量が増加し、対象の低分子化合物が多く合成されるのであれば、これらの低分子化合物は、本菌株の乾燥耐性メカニズムに関与する可能性がある。しかし、低分子化合物の分析が進んでいないことから、これらの遺伝子の働きおよび低分子化合物の関与については予測の域を出ない。今後は遅れている低分子化合物の分析を優先的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
並行して進めている実験のうちの1つ(低分子化合物の分析)について、抽出の検討に時間がかかり予定していた分析まで進めることができなかった。次年度は、次年度使用が生じた額とR4年度分使用額を合わせて使用することで遅れている分析を優先的に進める。
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