研究課題
腸内細菌が放出する膜小胞は、宿主の免疫賦活作用を示すため、ワクチンアジュバントへの応用が期待される。しかし膜小胞によって増強される免疫応答は不明であり、膜小胞による宿主細胞への作用機序も不明である。膜小胞の生産機構は不明であり、免疫賦活能に優れた膜小胞の高生産株は育種されていない。膜小胞の活用には、これらの点を解明する必要がある。すでに発酵食品や腸から独自に分離した細菌の膜小胞に、IgAやIgGという抗体の生産量を増加できるアジュバント活性を発見し、膜小胞による免疫細胞への作用機序を解明しつつある。そこで新たなアジュバント開発を目的として、独自の膜小胞を対象に(1)抗体の産生誘導活性を担う物質の同定、(2)膜小胞に対する腸管細胞層の応答や透過性の解明、(3)細菌による膜小胞の形成・分泌機構の解明を行う。2023年度は、(1)Lactiplantibacillus属細菌、Bifidobacterium属細菌の膜小胞を蛍光色素で標識して、腸管細胞層への作用機序について in vitro で評価できた。細胞表層の受容体に膜小胞が作用する様子を明らかにできた。また、これらの細胞の細胞応答として炎症性サイトカイン・抗炎症性サイトカインの生産誘導能を評価した。(2)膜小胞を高生産する腸内細菌の培養条件を明らかにできた。細胞壁の合成を阻害することで膜小胞の生産量が増加した。ランダム変異導入により、膜小胞高生産株を得た。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 87 ページ: 907~915
10.1093/bbb/zbad059