研究課題/領域番号 |
21K05353
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
松永 渉 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20415300)
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研究分担者 |
後藤 章暢 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70283885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 乳酸菌 / 腸内フローラ |
研究実績の概要 |
近年、ヒトの腸内フローラには「お腹の調子を整える」以上に広範な機能を持つことが明らかとなり、腸内フローラの重要性は今や一つの臓器にも例えられている。しかし、健康食品の宣伝文句と違って、サプリメントで腸内フローラに永続的な変化を起こすことは不可能に近い。一方、最近日本に紹介された糞便細菌叢移植(FMT)は、腸内フローラの改良に効果的だが、いわゆる「悪玉菌」も同時に導入されるために危険や不確定要素も多く、また不潔感から来る拒否感もあって普及度が低いのが実情である。本研究は、主に大腸がん予防の観点から、FMTに代わる効果的な腸内フローラ改善法を開発し、さらにより積極的な手段として、遺伝子操作した腸内細菌により腸内フローラを介したがん予防法の開発を目指している。 本年度は、外来の菌との区別が容易な乳酸菌を主なモデル細菌としてマウスに摂取させ、腸内フローラの改善効率を調べた。OD660で1相当の乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei JCM8130を経口、経直腸投与等を行ったが、糞のクラスター解析の結果、どのような方法でも単純な経口投与以上の導入効果はなく、またあくまで「通過菌」であるとも考えられた。このことは、腸内フローラを簡単に変化させられないという事実を示すことになったが、特殊な方法を使う必要がないことも意味している。よって今後は、外来菌の導入方法についての検討は止めて、もう一つの目的である遺伝子操作した大腸菌による大腸がん予防法の開発に集中する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、外来の菌との区別が容易な乳酸菌を主なモデル細菌としてマウスに摂取させ、腸内フローラの改善効率を調べたが、進捗はやや遅れている。OD660で1相当の乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei JCM8130を経口、経直腸投与等を行ったが、糞のクラスター解析の結果、どのような方法でも単純な経口投与以上の外来細菌の導入効果はなく、また腸内フローラの改善ではなく、あくまで「通過菌」でしかない可能性も排除できないため、との結論に至ったため、腸内フローラの改善効率に関する研究については進捗が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、外来の菌との区別が容易な乳酸菌を主なモデル細菌としてマウスに摂取させ、腸内フローラの改善効率を調べた。OD660で1相当の乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei JCM8130を経口、経直腸投与等を行ったが、糞のクラスター解析の結果、どのような方法でも単純な経口投与以上の導入効果はなく、またあくまで「通過菌」であるとも考えられた。このことは、腸内フローラを簡単に変化させられないという事実を示すことになったが、特殊な方法を使わなくても、一定期間は外来細菌を腸内フローラにとどめられる事実も意味している。よって今後は、外来菌の導入方法についての検討は止めて、もう一つの目的である遺伝子操作した大腸菌による大腸がん予防法の開発に集中する。 外部からがんに作用するTRAIL(TNF-related Apoptosis Inducing Ligand)を念頭に、大腸菌を遺伝子操作し、目標の物質をプリペラズムに分泌させるようにするか、またはエンテロトキシンと同様に菌体外に分泌させるよう設計する。また、動物実験で大腸がんモデル動物作製にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進捗がやや遅れていることに加え、新型コロナウイルス流行が収束しないことによる諸々の規制のため、参加を予定していた学会や出張を必要とする会合がオンライン形式となり、旅費を支出できなかったことによる。 新型コロナウイルスの流行いかんにかかわるので、旅費については明確な予定は立てられないが、大腸菌の遺伝子操作やモデル動物作製のために支出することを考えている。
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