研究課題/領域番号 |
21K05357
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
土肥 裕希 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20705412)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ルミクロム / 放線菌 / 代謝 / トランスポゾン / ビタミン |
研究実績の概要 |
リボフラビンは植物や微生物によって生産される水溶性ビタミンであり、自然界に広く存在する。生体から自然環境中に放出されたリボフラビンは光分解などを受けて容易にルミクロムとなるが、生じたルミクロムの環境動態は明らかにされていない。本研究では、ルミクロム分解能を有する放線菌Rhodococcus sp. LC-2株のルミクロム分解機構を解明することで、環境中におけるルミクロムの微生物分解経路を明らかにすることを目的としている。 ルミクロム存在下で培養したLC-2株の無細胞抽出液をルミクロムと反応させた結果、ルミクロムから2つの新たな化合物(P1およびP2)の生成が認められた。また、LC-2株の全RNAをRNAシークエンスを用いたトランスクリプトーム解析に供することで、ルミクロム存在下で転写量が100倍以上増加する遺伝子群を見出した。この遺伝子群にコードされていた推定Hydantoinaseの組換え酵素は、ルミクロムと反応してP1と同様の化合物を生成した。次いで、6140のすぐ下流に位置する遺伝子にコードされていた推定Amidohydrolaseの組換え酵素は、P1と反応してP2と同様の化合物を生成した。LC-MS/MSによって、P1はルミクロムが加水分解によって環開裂した化合物、P2はP1からカルバモイル基が脱離した化合物であることが同定された。 同時に、LC-2株のルミクロム分解に寄与する遺伝子の同定を目的として、トランスポゾン(Tn)を用いたランダム変異株作製法によってLC-2株のルミクロム非分解性の変異株を22株獲得した。これらのTn挿入部位を同定した結果、ある特定の領域にTnの挿入が多数重複して認められた。しかし、上述のルミクロム応答性の遺伝子群内にはTnの挿入は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスクリプトームを用いた発現解析では、ルミクロムによって転写量が顕著に増加する遺伝子群を見出すことに成功した。また、LC-2株のルミクロム代謝の最初の2反応と、その反応を触媒する酵素タンパク質の同定に成功した。トランスポゾンを用いたルミクロム分解遺伝子の同定では、目的の形質(ルミクロム非分解性)を示すLC-2株のTn変異株の量産体制が整った。以上のことから、初年度の目的はほぼ達成したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ルミクロムの代謝中間体P2を基質として反応する酵素(とその酵素反応系)を見出すことで、次の代謝物であるP3の代謝経路を同定する。順次、酵素生成物を基質に用いて同様の操作を繰り返すことで、P4以降の代謝経路を同定も図る。 トランスポゾンによるLC-2株のルミクロム非分解性変異株の量産し、その変異部位のライブラリーを構築し、コードされている酵素タンパク質の機能から、P3以降の代謝経路を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の機器を、新品購入額よりも安価な中古品で調達できたことから、差額が生じた。また、コロナの影響で、全ての学会がオンラインとなり、旅費が不要となった。消耗品試薬および消耗品物品の使用頻度が予想よりも高いことから、それらへの使用を計画している。
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