研究課題/領域番号 |
21K05359
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柘植 陽太 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (00647422)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖消費 / 代謝センサー / コリネ型細菌 / 遺伝子発現 / 中央代謝経路 |
研究実績の概要 |
微生物を用いた有用物質の生産には速い糖消費速度が必要である。現在、糖消費速度の向上のために代謝遺伝子の高発現などが行われているが、糖消費速度と中央代謝経路の遺伝子の発現レベルの関係については未だ不明な点が多い。もし中央代謝経路の遺伝子の発現レベルが糖消費速度と連動して変化するのであれば、糖消費速度を感知するセンサーが存在する可能性がある。そこで本研究ではアミノ酸生産菌として工業利用されているコリネ型細菌をモデルとして代謝センサーシステムの解明を行うことを目的とした。 コリネ型細菌の野生株ATCC 13032(WT株)に加えて、グルコース消費速度が増加する株としてH+-ATPase活性を低下させたatpG一塩基置換株(atpG-t817c株)を使用した(Sawada et al., J. Biosci. Bioeng. (2012))。また、グルコース消費速度が低下する株として、グルコースの取り込みとリン酸化に関わるホスホトランスフェラーゼシステムの遺伝子(ptsG)の欠損株を使用した。 使用する3株を好気条件下で培養して単位菌体量あたりのグルコース消費速度を算出した結果、atpG-t817c株は野生株より125%増加し、ptsG株は野生株より79%減少した。次に対数増殖期における各株の細胞を採取してmRNAを抽出した後、qRT-PCRにより転写解析を行った。その結果、中央代謝経路の41遺伝子のうち、15遺伝子の発現レベルが糖消費速度と正の相関を示し、3遺伝子の発現レベルが負の相関を示した。以上の結果から、コリネ型細菌において糖消費速度の変化に連動して中央代謝経路の遺伝子の発現レベルが変動することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は糖消費速度が変動したときにmRNAレベルで遺伝子発現がどのように変化するのかを調べた。今後ははじめにタンパク質レベルで同様の発現変動が見られるかを確認する。また、代謝センサーの候補の一つとしては代謝物が考えられる。そこで次に代謝解析を行うことで、糖消費速度の変動に応答して細胞内の濃度が変化する代謝物を探索する。コリネ型細菌は中央代謝経路遺伝子の発現を制御する転写制御機構について詳細に調べられている。そこで今までに明らかにされている中央代謝経路の遺伝子を制御する転写因子と、代謝解析で見出された代謝物が相互作用するかを確認することで、代謝センサーシステムの存在を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数により消費できなかったため。
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