細胞カプセル技術については、必要な時期に細胞内容物を漏出させることが重要である。細胞は死を迎えると細胞内容物が流出することが知られているので、培養時の経時的な細胞死だけではなくUV-C照射による殺処理による細胞死を、中性赤を用いて生死判定をし、加えて油脂やタンパク質をはじめとして細胞内容物の流出を解析の上評価した。その結果、培養液中には油脂成分はあまり漏出しないこと、タンパク質成分の漏出が認められることが判明した。また、細胞プラスチックス成型に関しては、緑藻細胞が従来生産する生体物質によって接合可能なことに注目し、細胞破砕液中の接合因子に注目した。細胞内容物のヘキサン分画で画分を回収し、外郭構造にαヘリックスの長鎖長を有するタンパク質が細胞間の接合に重要な内容物であると同定されている。以上から、特定の培養時期の細胞やUV-Cなどで殺処理された細胞を使うことで、細胞同士を接合させやすく、成型しやすくなることを示した。加えて利用技術に関しては、ゼオシンを選択マーカーにプレフェン酸デヒドロゲナーゼ変異株の構築をエレクトロポレーション法で試みるも、変異株の初代、次世代までの生育は可能であったが、複数世代の生育は実現できなかった。ゼオシンの選択圧の強さが明らかになる一方で、当該株の形質転換に用いたエレクトロポレーション法の条件最適化は実現できた。特に令和5年度の成果として、細胞プラスチックスを成型時に香気成分について、GC/MSの気相画分の解析の結果、香気成分が抗菌性物質cis-2-Penten-1-olとして同定された。抗菌成分はプラスチックス利用において重要な性能であり、細胞プラスチックス利用における有意な成果だと考えた。以上の研究成果から、緑藻の細胞を直接的に細胞プラスチックスの原料とし、かつ細胞の生産する代謝産物を直接的に利用できる可能性を示した。
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