研究実績の概要 |
糸状菌の細胞壁表層を覆うガラクトマンナン (GM) は病原性真菌の感染機構や毒性の発揮機構に関与していると考えられている。申請者は,これまでにGM生合成を担う新規な糖転移酵素を同定してきた。ごく最近,申請者は長らく「謎」であったGM中のガラクトフラノース (Galf ) 糖鎖合成初発酵素であるα-マンノシド β-Galf 転移酵素 (AnMgfA) を発見した。本研究では,病原性糸状菌Aspergillus fumigatus由来Mgf ファミリー酵素の酵素機能と立体構造,各種遺伝子破壊株におけるGM構造を明らかにすることにより糸状菌のGalf糖鎖生合成におけるMgfファミリー酵素の役割の詳細を明らかにする。さらに,各種遺伝子破壊株の表現型解析によりGalf糖鎖の生理的役割を明らかにすることを目的とした。 昨年度までの研究により、MgfAがUDP-Galf: α-Man β-1,6-Galf転移酵素であることを明らかにし、タンパク質立体構造を明らかにした。また、mgfAからmgfFまでの6重遺伝子破壊株(mgf6株)を構築した。さらに、β-ガラクトフラノシド β-1,5-ガ ラクトフラノース転移酵素であるgfsA、gfsBおよびgfsC遺伝子を破壊することでガラクトフラノース糖鎖の伸長を完全に抑制した(mgf6gfs3株)を構築した。今年度は、mgf6gfs3株よりガラクトマンナンを抽出して構造解析を試みた。しかし、糖鎖構造の中のGalf糖鎖欠損部位を同定することはできなかった。さらに、O-マンノース型ガラクトマンナンについても構造解析を試みたがGaf糖鎖の欠損を確認することができなかった。以上のことからMgfファミリータンパク質は糖脂質中のGalf残基の生合成に関わっていることが示唆されるが、GMの生合成への関わりも否定することはできないため、さらなる解析が必要である。
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