研究課題/領域番号 |
21K05374
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上田 誠 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (10615751)
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研究分担者 |
竹内 道樹 京都大学, 農学研究科, 特定助教 (40766193)
原 良太郎 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (70553535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 配糖体 / β-グルコシダーゼ / 糖転移反応 / 微生物 |
研究実績の概要 |
ポリフェノールやテルペンアルコールは有用な生理機能をもつが水に難溶で刺激性もある。この欠点の克服のため、配糖化し物性改善する研究が盛んである。配糖体のα-アノマーは酵素反応により合成可能である。β-アノマーは有機合成で合成可能だが、反応の選択性が低い。また、酵素反応ではアノマーの選択性は厳密だが収率が低い。配糖体を酵素反応で合成する手法として、α-アノマーでは、オリゴ糖から単糖をアグリコンに転移するグルコシダーゼによる糖転移反応が一般的である。一方、β-グルコシダーゼの研究は加水分解とオリゴ糖合成が主であり、β-配糖体合成活性が優位なβ-グルコシダーゼは発見されていない。本研究はこれまで合成困難であったβ-配糖体を、新規な微生物酵素により合成可能とすること、および酵素の性質解明を目的としている。 土壌より分離したAgrobacterium sp. No.201株を用い、フェネチルアルコールの配糖化(ドナーはセロビオースを使用)を検討した。フェネチルアルコール 7g/L,セロビオース 30 g/Lを仕込んだ際に、フェネチルアルコールの仕込みに対し10 %のモル収率でフェネチルアルコールの配糖体が蓄積した。セロビオースの濃度を100 g/Lまで増加させると配糖化反応速度はわずかに向上するのみで、配糖体のモル収率は大きく増加しなかった。 また、反応液のLCMSでの分析により、反応生成物としてグルコシル配糖体以外にセロビオシル配糖体と思われるピークも検出できており、グルコシル配糖体からさらに糖転移が進んでいることが推測できた。今後は副生成物の解析を進める必要がある。 活性株の探索も進めている。セロビオースを炭素源とした土壌からの分離や研究室の保存菌株による活性確認を行い、Rhizobiumなどの土壌細菌が広くβ型の糖転移活性を持つことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-グルコシダーゼの研究は加水分解とオリゴ糖合成が主であり、β-配糖体合成活性が優位なβ-グルコシダーゼは発見されていない。実際にアーモンド由来のβ-グルコシダーゼ(試薬)による糖転移反応を検討したが、加水分解反応が主であり、アルコール基質のフェネチルアルコールの配糖体はほとんど生成しなかった。それに対し、これまで本研究において土壌よりセロビオースの分解能があり、アルコール基質に対して転移能を示す菌株を10株以上取得した。これらの細菌はフェネチルアルコールやテルペンアルコールに対して配糖化能を示すことが確認できた。本反応を触媒する酵素は微生物菌体内の可溶化部位に発現することも確認している。本反応を触媒する酵素の諸性質を解明することにより、酵素反応メカニズムに関する新たな知見やものつくりに有用な反応の開発が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
取得した活性微生物を用い本配糖化反応の基質特異性を調べる。基質としてはアルキルアルコールやポリフェノールを中心に抗酸化能など有用性の高い基質を選択する。配糖化活性の評価では、グルコシル配糖体だけでなくセロビオシル配糖体(二糖配糖体)の生成の有無も確認する。また、本酵素活性(精製した酵素ではないが)について、セロビオースを基質とした転移能(加水分解活性と3糖を生成する転移能など)も確認していく。これらの結果から酵素反応の新規性を評価していく。 触媒活性を示す酵素の理化学的評価のため、酵素の精製およびゲノムからのクローニングを行う。酵素の精製については高活性な菌株を選び実行する。ゲノムからのクローニングについては、β型配糖化活性を持つと推測されるβ-グルコシダーゼをこれまでの文献等から選択し、ゲノム情報があり本活性を示す微生物菌株からクローニングする対象酵素遺伝子を選んで実行する。この二つの方法からβ配糖体を転移反応により合成する特異的な酵素の取得を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通り進捗しているが、購入資材の見込み価格の違いにより若干の端数金額が生じた。2022年度は計画通りの研究を見込むが、次年度使用額は十分に支出する予定である。
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