ビタミンB2であるリボフラビンとその補酵素型のFADやFMNは、生物のあらゆる生理機能に必須な化合物であるため、細胞内レベルは恒常的に維持されている。しかしながら、これらフラビン化合物いつどこで合成されるのか?という生合成の調節機構や、合成されたこれらフラビン化合物が細胞内のオルガネラ、組織間をどのように輸送されているのか?という輸送機構については全く不明である。そこで我々は、シロイヌナズナにおけるビタミンB2生合成の調節機構や輸送機構に関わる新規因子を同定し、それらの機能解析を行ってきた。その結果、シロイヌナズナのリボフラビン合成系遺伝子の発現は、種々の環境ストレスにより上昇し、細胞内リボフラビン量も増加した。さらに、細胞内リボフラビン量を増加させた形質転換植物は、種子の発芽やストレス耐性能に変化する傾向が認められることから、細胞内フラビン化合物レベルの変化が植物の生育や環境ストレス応答に関与する可能性が示唆された。また、植物におけるフラビン化合物輸送体候補因子を単離し、そのフラビン化合物輸送活性を調べた結果、同定した輸送体候補遺伝子は酵母において顕著なフラビン取り込み活性を示すことが明らかになった。さらにこれら候補遺伝子が実際に植物細胞内においてもフラビン輸送体として機能しているかについて、シロイヌナズナT87培養細胞を用いてフラビン輸送活性を調べた結果、顕著なリボフラビン取り込み活性が見られた。この結果は、植物におけるビタミンB2輸送体の存在を初めて示唆するものである。今後さらに詳細なビタミンB2の調節、輸送機構を明らかにすることで、将来的には有用な植物の分子育種などへの応用が期待される。
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