研究課題/領域番号 |
21K05387
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
峯 昇平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70415751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PET / 耐熱性 / 酵素 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
PET(ポリエチレンテレフタレート)を主とするプラスチック廃棄物は、重大な環境問題である。近年、PETを原料にまで分解できる酵素「PETase(ペターゼ)」が発見され、資源リサイクル実現可能な酵素として注目されている。しかしながら、PETaseは熱に弱く、35℃以上になると活性を失う。そこで、本研究では、50℃以上で高活性を有する耐熱性PETaseを作製することを目的とする。研究実施計画に従い、PETaseのX線結晶構造解析を行い、得られた立体構造情報から構造安定性に影響する部分を見出し、その部分のアミノ酸を改変した。具体的には、システイン残基置換によるジスルフィド結合の形成、分子内部への疎水性アミノ酸残基の導入、塩基性または酸性アミノ酸残基置換による静電相互作用の形成、さらには分子表面に突き出たループの短鎖化ならびにプロリン残基を導入を行った。その結果、PETaseの熱変性温度を約30℃向上させ、60℃でも安定な耐熱性PETaseを作り出すことに成功した。また、耐熱性PETaseのX線結晶構造解析を行い、全体構造および活性部位構造が野生型と一致することを確認した。次に市販のPET製品に対する活性を調べたところ、耐熱性PETaseは野生型に比べ、90%以上活性が向上し、かつ、50℃でもPETを分解できることがわかった。今後は他のプラスチック分解酵素と活性を比較することで本研究で開発した耐熱性PETaseの優位性を証明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記述した通りに実験を行い、PETaseの熱変性温度ならびに活性を向上させることに成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
現状、PETaseの熱安定化ならびに活性向上に成功している。今後は他のプラスチック分解酵素と活性を比較することで本研究で開発した耐熱性PETaseの優位性を証明していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は概ね順調に研究が進んだため、最小限の使用額で研究を行うことができた。本研究で開発した耐熱性PETaseの優位性を証明するために、他のプラスチック分解酵素と活性比較を行う予定であるが、その場合、吸光度測定器が必要となる。その費用が高額なため、今年度分を来年度に繰り越し、研究遂行していく予定である。
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