研究課題/領域番号 |
21K05388
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐分利 亘 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (00598089)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セロビオース2-エピメラーゼ / マンノース2-エピメラーゼ / 糖質 / 異性化 / キメラ酵素 |
研究実績の概要 |
糖質の高度利用には,希少糖質の効率合成法が必要である.本研究では,微生物の多様な糖質代謝を支える異性化酵素の中でも,セロビオース2-エピメラーゼやマンノースイソメラーゼなど様々な糖質異性化酵素を含む酵素群に注目し,反応特異性を制御する機構の解明と高活性変異酵素の開発を目的とした.セロビオース2-エピメラーぜの中にはエピメラーゼ活性のみを示す酵素 (1機能CE) とエピメラーゼ活性に加えてイソメラーゼ活性を示す酵素 (2機能CE) が存在するが,この特異性の違いを説明する構造は明らかではなかった.そこで,1機能CEと2機能CEの間で構造領域を入れ換えた一連のキメラ酵素を作成した.具体的には,(α/α)6バレルの触媒ドメインを構成するαヘリックス1と2,3と4,5と6,7と8,9と10,11と12について,1機能酵素の構造を2機能酵素に移植した.これら6つのキメラ酵素のうち,最初の3つの変異酵素は活性型酵素として得られた.この機能について解析を進めている. マンノースエピメラーゼ (ME酵素) については高活性変異酵素の取得のため,ハイスループットスクリーニング系を検討した.本スクリーニング系では,マンノーストランスポーター遺伝子を欠失させることでマンノース資化性を失われた大腸菌を用い,この細胞表層にME酵素を発現させることでマンノース資化性の回復,また,活性に応じた生育速度の増加により高活性変異酵素をスクリーニングすることを計画した.マンノーストランスポーターを構成する3タンパク質全ての遺伝子を欠失させることでマンノース資化性を完全に失わせることができた.この大腸菌変異株をホストとし,氷核タンパク質のNドメインを付加したME酵素を発現させると,ME酵素は外膜画分に生産され,マンノース資化性の回復が確認された.この系を利用して高活性変異酵素をスクリーニングする予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,セロビオース2-エピメラーゼについては一連のキメラ酵素を構築した.いくつかのキメラ酵素では活性が認められたため,機能変化を調査することが可能である.当初計画では,キメラ化により活性が得られないことを想定していたが,解析に十分な活性を備えた酵素を取得できたことは大きな進展である.また,ME酵素についてもマンノース資化性を失ったホスト細胞の構築と外膜画分でのME酵素の発現に成功し,ME酵素の発現によるマンノース資化性の回復も確認され,高活性変異酵素の取得に向けた技術基盤が整備された.
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今後の研究の推進方策 |
セロビオース2-エピメラーゼについて構築したキメラ酵素の詳細な機能解析を行うとともに,機能変化が認められた場合は構造解析を実施したい.また,1機能CEについて反応特異性を変化させる構造要素を突き止め,変異酵素ライブラリーを構築して解析を進めたい.このための簡便なアッセイ系について構築を進める.ME酵素については高活性変異酵素のスクリーニングを行い,良い変異酵素が取得できた場合は機能・構造解析を進める.
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