研究実績の概要 |
本年度は、まずターゲットとするフラビンタンパク質を選ぶために、Ashbya gossypiiリボフラビン過剰生産変異株におけるフラビンタンパク質の機能を野生株と比較した。過剰生産変異株において遺伝子の変異が認められた、4つのフラビンタンパク質(NADH脱水素酵素、コハク酸脱水素酵素、グルタチオン還元酵素、アセト乳酸合成酵素)の比活性を細胞破砕液で測定した。過剰生産株では、NADH脱水素酵素とコハク酸脱水素酵素の比活性が劇的に低下していたのに対し、グルタチオン還元酵素とアセト乳酸合成酵素の比活性は上昇していた。NADH脱水素酵素とコハク酸脱水素酵素の比活性が劇的に低下していたことは、過剰生産株のミトコンドリア膜電位が野生株に比べて減少していたことと一致していた。 次にそれらの酵素をコードする遺伝子発現量を、定量的逆転写PCRで解析した。NADH脱水素酵素(AgNDI1)とコハク酸脱水素酵素(AgSDH1とAgSDH2)、グルタチオン還元酵素遺伝子(AgGLR1)の発現量は、過剰生産株で劇的に上昇していたが、アセト乳酸合成酵素(AgIVL2)の発現量は、比活性が約20倍以上上昇していたのにもかかわらず、約2倍程度しか上昇していなかった。また過剰生産株では、リボフラビン生合成遺伝子(AgRIB1,2,3,4,5,7)の発現量が野生株に比べて数倍から数十倍上昇していた。 以上の結果より、リボフラビン過剰生産株ではアセト乳酸合成酵素の酵素活性が野生株より上昇しており、フラビンタンパク質としてリボフラビン過剰生産に関与していると推測された。
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