研究課題/領域番号 |
21K05396
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 和央 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20183171)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体認識配糖体 / エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ / 立体構造 / ドメイン / マルチドメイン構造 |
研究実績の概要 |
本年度は、野生型エンドHSと欠失変異型エンドHSの発現系の構築を行った。 1. 野生型エンドHSの発現系 エンドHS遺伝子全長(1009塩基)を挿入したプラスミドpET50b(+)をテンペレートとし、N末端側のトランスメンブレン領域(29アミノ酸)を欠失するように設計したプライマーを用いて、エンドHS遺伝子を増幅した。得られたエンドHS遺伝子を発現用ベクターpET23a(+)のBam HI-Sal Iサイトに挿入した。 エンドHS遺伝子挿入pET23a(+)を大腸菌DH5αで増幅し、得られたエンドHS遺伝子挿入pET23a(+)で発現用大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。得られた形質転換BL21(DE3)を培養し、IPTG誘導で発現する野生型エンドHSをSDS-PAGEで確認し、野生型エンドHS発現BL21(DE3)株を得た。 2. 欠失変異型エンドHSの発現系 上記のエンドHS遺伝子挿入pET23a(+)をテンペレートとして、酵素のC末端側から様々な長さで欠損するよう設計した各種プライマーを用いてインバースPCRを行いセルフライゲーションによって、各種欠失変異型エンドHS遺伝子挿入pET23a(+)を調製した。これらを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、エンドHS遺伝子挿入pET23a(+)の存在を確認するとともに挿入遺伝子領域における塩基置換や欠損のないことを確認した。 形質転換したDH5αで各種欠失エンドHS遺伝子挿入pET23a(+)増幅し、得られたプラスミドで発現用大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。アンピシリン含有LB培地で形質転換BL21(DE3)を選択した。得られた形質転換BL21(DE3)をLB培地で培養し、IPTG誘導で発現する欠失変異型エンドHSをSDS-PAGEで確認した。その結果、6種類の欠失変異型エンドHS発現BL21(DE3)株を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナ禍のため研究時間が制限され、予定していた研究をすべて行うことができなかった。しかし、野生型エンドHSおよび欠失変異型エンドHSの大腸菌での発現系の構築を行うことができた。 その結果、野生型エンドHS発現BL21(DE3)株を調製し、この株を培養することによって、野生型エンドHSを発現することができた。 さらに、インバースPCRによってそれぞれ異なる欠損変異遺伝子発現BL21(DE3)株を6株調製した。これらの株を培養することによって、C末端側からそれぞれ異なる長さで欠失したエンドHSを発現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって得られた野生型エンドHSおよび欠失変異型エンドHSの発現系を用いて、発現条件を検討し大量発現条件を明らかにする。発現した欠失変異型エンドHSを精製し、糖タンパク質からの糖鎖遊離活性と糖鎖転移活性における酵素反応動力学的解析を行う。また、変異酵素と糖鎖との分子間相互作用を解析する。さらに、ドメイン間のループ構造を特異的プロテアーゼで加水分解し、各ドメイン欠失エンドHSを調製し、同様の解析を行う。こうして各ドメインの機能を明らかにする。 また、得られ欠失変異型エンドHSの結晶化条件を検討し、得られた結晶を用いてX線結晶構造解析を行い、欠失変異型エンドHSの立体構造とその糖鎖構造特異性との関係から、エンドHSのドメインの機能を明らかにする。 さらに、基質糖タンパク質と野生型および欠失変異型エンドHSとの共結晶を調製し、X線結晶構造解析によってエンドHS・基質複合体の立体構造を明らかにする。そして、触媒および糖鎖認識関与するアミノ酸残基を特定し、各ドメインの機能を解明する。 一方、エンドHSのドメイン解析から特定した加水分解・糖鎖転移に関わるアミノ酸残基を置換し糖鎖転移合成型エンドHSに改変し、ヘスペリジンおよびブレオマイシンに糖鎖を転移導入する。糖鎖結合ヘスペリジンおよびブレオマイシンのマウス肝臓への特異的移行を調べる。また、糖鎖転移合成エンドHSを用いて抗リウマチ抗体医薬品トシリズマブなどのバイオ医薬品の糖鎖を入替えと糖鎖構造最適化を検証する。 さらに、エンドHSの構成ドメインをハイマンノース型糖鎖特異的エンドFV遺伝子に挿入し、ハイブリッドエンドFVの糖鎖構造特異性を調べ、ドメイン機能を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍による研究制限があったため、計画どうりの研究を行うことができず、使用した試薬や実験器具の量が減った。このため、これらの購入に充てる経費が少なくなり、次年度使用が生じた。 これは、次年度に欠失変異型エンドHSの糖タンパク質からの糖鎖遊離活性と糖鎖転移活性における酵素反応動力学的解析や、変異酵素と糖鎖との分子間相互作用の解析に充てる。さらに、特異的プロテアーゼを利用したドメイン欠失エンドHSの調製とその機能解析に利用する。また、欠失変異型エンドHSの結晶化とそのX線結晶構造解析による立体構造の解明のために利用する。さらに、基質糖タンパク質と野生型および欠失変異型エンドHSとの共結晶のX線結晶構造解析に充てる。 さらに、エンドHSの糖鎖転移合成型エンドHSへの改変とこれを用いた生体認識ヘスペリジンおよびブレオマイシンの合成の検証実験に利用するとともに、バイオ医薬品の糖鎖を組換え糖鎖構造最適化の検証ために用いる。また、エンドHS構成ドメインをもつハイブリッド酵素の作製とその糖鎖認識機能の検証のために利用する。
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