研究課題/領域番号 |
21K05397
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
武藤 裕 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (30192769)
|
研究分担者 |
桑迫 香奈子 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (10568736)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | スプライシング制御因子 / スプライシング病 |
研究実績の概要 |
近年,mRNA前駆体のスプライシング反応の不全で発症する“スプライシング病”の存在が明らかになってきた。これらの多くは,スプライシング反応初期におけるイントロン部位確定の不具合が原因であり,主にスプライシング制御因子が正しく働かないために発症する。脊髄性筋萎縮症では,SF2などの制御因子が関わる運動神経細胞生存遺伝子(Survival motor neuron: SMN)の選択的スプライシングの制御不全が原因である。SF2については,機能する場合の制御配列が確定していないこと,および,他の因子との相互作用による選択性の変換などが未解決である。本研究では、まず、SF2 RRM1と標的配列を含むRNA断片の複合体を結晶化し、これをX線結晶構造解析することで、SF2タンパク質の標的配列認識機構を明らかにすることを目標とした。また、他のスプライシング因子に含まれる同様の機能ドメインについての構造解析を試み、この機能ドメインによるクロストークに関する知見を得ようと考えた。この構造解析で重要になる点は、結晶化スクリーニングを行うのに十分な濃度で、安定に単分散SF2 RRM1の濃縮法を確立と結晶化スクリーニングによる共結晶化に条件を明らかにすることである。本年度は、新たにタグを付加したSF2 RRM1を発現させるベクターを作製し大量発現し、大量発現を行った後、タグ切断を行い、精製を行った。次に3種類の濃縮方法を試して検討し、従来よりも高い濃度まで濃縮できる方法を確立した。濃縮後試料を用いてシッティングドロップ法による結晶化スクリーニングを行ったところ、4つの条件で微結晶のようなものを確認することができている。また本年度は、SFRS1がもつRNA結合ドメインをもち、ALS発症にも関連するスプライシング因子Matrin-3について、そのRNA結合ドメインの構造を明らかにして報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画が遅れている主な理由は、COVID19の感染対策として、感染拡大が広がった、5月、9月、1月末の時期に大学内への入構が制限されたことに起因している(大学として、研究室に出入りする人数をこの期間、制限している)。しかし、3回目のワクチン接種が広がるとともにこの制限は緩和される方向に動いており、今後、遅れを取り戻すように計画を進めていきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
SRSF1のふたつあるRNA結合ドメインのうち一番目のRRM1については、長期間、高濃度の状態で保つことが困難で、安定的に結晶条件の探索を進めることが難しかった。初年度は、この蛋白質の安定的な供給条件の検討を進め、ある程度の道筋をつけることができた。この条件で調製した試料を用いることで、さらに結晶化条件を広く探索できる基盤ができてきたと考えている。すでに、いくつかの微結晶を得ているが、さらに、この試料を用いた結合RNA配列との安定的な結晶条件の検討を行っている。さらに, SF2/Tra2b/SRSF9/hnRNP G複合体のスプライシング促進メカニズムを明らかにするため, SRSF9やhnRNP GのRNA結合ドメインについて, NMR法による滴定実験を進めていく。また、これらの因子は,RRMドメインというRNA結合ドメインを共通にもつが、スプライシング反応が進行する上で、機能的な役割分担が行われている。そのため、クロストークを起こす可能性がある因子についても、構造的な情報を得て、これらの因子の協働性について考察していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、COVID19の影響もあり、実験進行に遅延が生じた。このため消耗品の消費が遅れたこと、および学会等への参加を抑制したことが予算消化に影響を与えた。消耗品については、酵素や培養実験材料など、利用状況によって購入するために、実験の遅延とともに消耗の遅れが生じ、予算消化の遅れに繋がっている。これらの予算については、2022年度、2023年度に回して、実験の進行とともに使用する予定である。
|