研究課題
久慈産琥珀からのみ、ジテルぺノイドから炭素数が1~4個欠如した上に環化・芳香環化、酸化・還元された新規生物活性物質が多数単離される理由の解明を、ケミカルバイオロジーの研究手法で進めている。これまで、久慈産琥珀から精製法やアッセイ法を変えることで新規物質を多数見出しているが、ユビキチンリガーゼの変異酵母rsp5A401E株の生育回復活性で5種類の物質を検出し、そのうち一つを新規のseco-kujigamberolと決定した。また、中国(撫順)産琥珀からは既知物質のdehydroabietic acidとdehydroabietaneを、また、琥珀より新しいマダガスカル産コーパルからは、既知物質のisoozic acidなどを単離同定した。最終年度は、rspA401E株の活性物質で2種の新規物質を、RBL-2H3細胞の脱顆粒抑制活性で2種の新規物質を単離精製し構造を決定すると共に、ウクライナ産琥珀の生物活性物質がバルト海産琥珀のそれらと同じことから、両者を同一の琥珀と同定した。さらに、久慈産琥珀と起源樹がAraucariaceaで同一と言われ、久慈産琥珀より約3500万年古いスペイン産琥珀から、カルシウムシグナル伝達に関わる遺伝子破壊酵母株を用い、久慈産琥珀と同じkujigamberolなど共通の生物活性物質を同定した。それぞれの含量をHPLCで定量した結果、久慈産琥珀とスペイン産琥珀は同種の琥珀であるが、時代が古いスペイン産琥珀の方が続成作用が強いためか化合物の分解が進んでいた。このことから、久慈産琥珀はスペイン産琥珀より続成作用が弱く、また、バルト海産琥珀(ジテルペノイドが主)などより続成作用が強いため、新規物質が多数見つかることが推定された。なおこの研究は、さらに新たに採択された基盤研究(C)で継続していく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 87 ページ: 575~583
10.1093/bbb/zbad027