研究課題/領域番号 |
21K05400
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
櫻井 香里 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50447512)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 標的タンパク質探索 / ラベリング / 金ナノ粒子 / 化学プローブ / スクリーニング |
研究実績の概要 |
標的タンパク質探索技術の開発は、医薬品および候補化合物の作用機構の分子基盤を明らかにするため重要である。直接同定するための従来法は煩雑であり、合理的な基盤技術の確立が急務である。本研究では、独自技術である金ナノ粒子を基盤としたフォトアフィニティープローブの設計を発展させて種々の抗癌活性化合物に応用し、汎用性の高い標的タンパク質網羅同定技術を確立する。具体的には、①クリックケミストリーによる金ナノ粒子プローブの簡易合成と標的タンパク質網羅同定への応用、②金ナノ粒子プローブによる標的タンパク質網羅解析のための求電子基の探索、の2つのプロジェクトを計画した。これにより、プローブの簡易合成法の開発および、標的タンパク質ラベル化に適した求電子基の探索と標的タンパク質の質量分析法による網羅解析へ応用を目指す。2021年度においては、前駆体であるアジド修飾金ナノ粒子および、モデルリガンド化合物と光反応基のアルキン誘導体を新たに合成し、アジド基とアルキン基間のクリックケミストリーにより同時に一工程で高効率にカップリングする条件を種々検討した。また、標的タンパク質ラベル化に適した求電子基を探索するため、タンパク質に対する反応性が期待される約20種類の求電子基のアルキン誘導体を合成した。10種類の求電子基については、モデルリガンドであるラクトースと共修飾してプローブを合成した。これらプローブを用いて、多種類のタンパク質に対するラベリング反応を、様々な反応条件下で迅速に評価するために、新しい反応スクリーニング系の構築を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初計画に基づいて以下の2つの具体的目標の実現を目指し、①に関しては前駆体として、アジド修飾金ナノ粒子および、モデルリガンドであるラクトースと種々の光反応基のアルキン誘導体を合成し、アジド基-アルキン基間クリックケミストリーのカップリグ条件を種々検討した。②においてはタンパク質反応性が期待される約20種類の求電子基のアルキン誘導体を合成し、また10種類の求電子基については、モデルリガンドであるラクトースと共修飾してプローブの合成を達成した。これらプローブを用いて、複数の結合タンパク質に対する、様々な反応条件下でのラベリング反応を、迅速に評価するための新規反応スクリーニング系を構築し、256反応のスクリーニングに成功した。
①クリックケミストリーによる金ナノ粒子プローブの簡易合成と標的タンパク質網羅同定への応用 ②金ナノ粒子プローブによる標的タンパク質網羅解析のための求電子基の探索
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初計画の具体的目標に基づいて、①に関しては、抗癌活性化合物のアルキン誘導体と光反応基を修飾した金ナノ粒子プローブを合成し、これらを用いたタンパク質の効率的なアフィニティーラベリング反応の開発を行う。具体的には、モデル系標的タンパク質や細胞抽出液に対するラベル化効率と選択性を指標として構造機能解析を目指す。また最も有効な光反応基を用い、フォトアフィニティーラベリングによる未知標的タンパク質探索を実施する。②に関しては、2021年度に構築したスクリーニング系を用いて、異なる求電子基を修飾した30種以上のアフィニティーラベリングプローブを調達し、多種類のタンパク質に対する反応性を評価する。また求電子性ラベルにより標的可能なタンパク質残基を明らかにし、金ナノ粒子アフィニティーラベリングの一般性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナ禍のため、当初予定した学会参加による旅費や解析費用による謝金などの項目における支出の執行ができなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度はタンパク質シークエンス委託解析費用(その他経費)が当初予定額を超える可能性が想定されるため、次年度使用額を充当する。
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