ニッポンクサカゲロウ(Crusoperla nipponensis)成虫から単離した複数の緑色色素の一成分について、MSを含む機器分析を実施することにより、ビリベルジンと同定することができた。また、その生合成に関与する酸化還元酵素をコードする遺伝子配列をクサカゲロウのRNAseqのデータをもとに数種明らかにすることができた。 さらに、茶色の個体である越冬型の成虫と緑色成虫の両方からcDNAを調製し、ビリベルジン生合成に関与する酵素をコードするmRNA量を定量するとともに、RNAiにより酵素発現を抑制し、体色の変化があるか観察した。その結果、生合成酵素の発現量が緑色個体と茶色個体で異なることや、RNAiにより成虫個体内で酵素をコードするmRNA量が抑制されていることが確認できた一方で、形態や色調などに大きな違いは認められなかった。以上の結果から、ビリベルジンは確かに成虫体内に存在するものの、体色に大きな影響をおよぼしていない可能性もあることが示唆された。また、ヒトのビリベルジン生合成に関与するヘムにも着目し、その生合成酵素に関しても、RNA量を定量するとともに、RNAiによる抑制を試みた。また、その分析と並行して、これらの既知緑色色素成分の生合成に関わっている酵素について探索範囲を広げ、新たな酵素の塩基配列を明らかにし、大腸菌によるその酵素の過剰発現を試みた。この研究に加えて、ビリベルジンとは異なる黄緑色の色素を同定するために各種機器分析を進めた。
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