研究課題/領域番号 |
21K05404
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
湯澤 賢 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (20843890)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリケチド合成酵素 / 生化学 / 試験管内再構成 / 非大腸菌タンパク質生産系 / 巨大酵素 |
研究実績の概要 |
モジュラーポリケチド合成酵素(モジュラーPKS)は多様な薬剤の基本骨格の生合成を担う巨大なマルチドメイン酵素であり、その機能や構造の解析が盛んに試みられている。しかしタンパク質の分割など大規模な改変を加えていない野生型酵素による試験管内再構成を達成した例は世界でまだ1例しかなく、至適温度、至適pH、至適イオン強度、kcat、KM等の基本的な情報が一般にどんな分布を示すかは明らかになっていない。本研究では、これまで利用されていない非大腸菌タンパク質生産系も併用し、新たに数種類の野生型モジュラーPKSの試験管内再構成およびそれらの生化学的解析を実施する。当該酵素の理解がより一層進めば、モジュラーPKSの機能改変による医薬品アナログ等の開発も飛躍的に進展すると考えられる。第一のモジュラーPKSに関しては、非大腸菌タンパク質生産系を併用することで試験管内再構成にすでに成功している(通常の大腸菌を用いたタンパク質生産系では酵素の活性体を一部取得できなかった)。また、至適温度、至適pH、至適イオン強度、kcat、KM等の解析を現在進めているところである。本成果は未発表であるが、世界で2例目、国内では初の成果となり得る。第二のモジュラーPKSに関しては、プラスミド構築やタンパク質精製など試験管内再構成に向けた準備を行っている段階である。また、本研究計画提出時には記載していなかったが、現在第三の系の再構成の準備も進めている。この第三の系は、モジュラーPKSではなく、モジュラーPKSと非リボソーム型ペプチド合成酵素とのハイブリッドの系である。予備実験の結果、大腸菌を用いた通常のタンパク質生産系では一部酵素の活性体の取得が困難であることが明らかとなった。今後は、我々が保有する非大腸菌タンパク質生産系を活用して、試験管内再構成および生化学的解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モジュラーPKSは複数の巨大酵素から構成されており、通常の酵素と比較してタンパク質の取り扱いは容易ではない。担当する学生は徐々に技術を向上させており、試験管内再構成の再現には成功したが、まだ不慣れな部分もあり、結果が安定せず、1年目で論文発表するまでには至らなかった。一方で交付申請書には、1、2年目は第一の系に焦点を当てて研究を実施することを掲げた。2、3年目においては第二の系に挑戦することを掲げている。以上のことから初年度としては概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
第一の系に関しては現時点でも論文発表は可能であるが、論文の質をさらに高めるため、再構成系を活用し天然物のアナログ生産も試みる。当該天然物は生物活性があることが知られているため、それらのアナログも同等あるいは場合によってはそれ以上の活性を示す可能性がある。そこでアナログの定量的な活性評価が可能な系も模索し、試験管内再構成から薬剤候補の提案までをひとまとめにした論文を執筆したいと考えている。第三の系も生産される天然物は生物活性があることが知られているため、試験管内再構成に成功すれば第一の系と同様の内容での論文執筆を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品費として振とう機の購入を予定していたが、別予算で振とう機を購入したために次年度予算額が生じた。一方で本研究に必要な大型遠心機が故障して使用できなくなったため、当初振とう機の予算として計上し、かつ今年度に繰り越した予算を、遠心機の購入に充当する予定である。設備備品費以外の予算の使用に関してはほぼ当初の想定通りであった。
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