研究課題/領域番号 |
21K05408
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
木村 智之 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (40462270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 単結晶X線構造解析 / 結晶スポンジ法 / 天然物 / 絶対立体化学 |
研究実績の概要 |
引き続き子量1000を超える大環状マクロライド、環状チオペプチド、テルペンを用い研究を行った。昨期までは、ディスオーダの問題や解像度の問題を検証するため、特に狭い空間に大きな化合物を入れようとしている本研究課題においては他の手法と比較し慎重に検証する必要がと考えていることから、大環状マクロライド、環状チオペプチドについては、NMRで相対配置の決定をおこない、テルペンに関しては4つの類縁体のうち1つの化合物で結晶化したので単結晶X線構造解析を行いった。そして、結晶スポンジへのソーキング実験を行ったが、占有率が低く対象の化合物の構造を計算することができなかった。 そこで今期は、結晶スポンジ中のサンプルの占有率をあげるために保護基の導入を検討した。大環状マクロライド化合物は、1級ならびに2級水酸基に対し保護基の導入を試みた。21個の水酸基全てに保護基が導入できなかったが、半数以上に保護基を導入でき疎水性が増した。このサンプルを用いてソーキングの温度を-20度から40度まで変化させ検討している。テルペンについては、糖を加水分解し、アグリコン部分のみでソーキングを検討している。 さらに今期、ここ数年で急速に発展したmicroEDの測定機会をいただき、解析をより迅速化、測定に必要なサンプル量の低減を目的とし、microEDを用いた解析法を試みた。 その結果、0.2-1マイクロメートルに調整中に結晶スポンジが壊れる、電子線を当てた際に反射が出る前に壊れたしまうことが確認された。しかし、それらを回避し測定を行うことは困難であった。さらに現在のクライオ電子顕微鏡を用いたmicroEDの場合、測定後の解析について格子定数の決定など、単結晶X線構造解析より時間を有することがわかった。以上の理由から、今後は単結晶X線構造解析に注力し論文化に向けてデータをまとめたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨期から引き続き子量1000を超える大環状マクロライド、環状チオペプチド、テルペンを用い研究を行った。大環状マクロライドは、水酸基が分子表面に多数存在しており、ソーキングに影響していると考えられたため、今期は水酸基21箇所に保護基の導入を検討した。一回の反応で全ての水酸基に対し、保護基を導入することは困難であったが、約半数の水酸基に対し保護基を入れることができた。反応の再現性もあり、極性も天然物と変わったため本誘導体を用いてソーキング実験を行うことにした。テルペン化合物については、糖部分を加水分解しアグリコン部分のみのサンプルも用意した。 これまでの実験結果から室温より低い温度で占有率がよかったため、より低温の-20度から40度までの幅でソーキング実験を行ったが、はやり低温の方が良好の結果を与える傾向にある。現在、再現性並びにより細かな温度設定でのソーキング実験を計画している。 今期、microEDの測定機会をいただき、解析手法をmicroEDに変えて解析を行ったが、サンプル調整中に結晶スポンジが壊れる、電子線を当てた際に反射が出る前に壊れるなどが確認されたため、来期はこれまで通り単結晶X線構造解析装置にて解析を行う予定である。テルペンに関しては4つの類縁体のうち測定が完了していない3つの類縁体について結晶スポンジ法の測定が終了次第、論文化し本研究について発表する予定。
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今後の研究の推進方策 |
今期用いたmicroEDを用いた解析方法は中断し、来期は従来通りの単結晶X線結晶構造解析にて構造解析を行い、本研究課題のまとめを行う。 これまでの結果から、本研究課題で用いている天然物の場合水酸基がソーキングを阻害していることが考えられるため、大環状マクロライドは水酸基に保護基の導入したサンプルを、テルペン化合物については、糖部分を加水分解しアグリコン部分のみのサンプルも用意した。これらサンプルを用いて室温より低い温度でソーキング実験を検討している。既にいくつか検討を始めているが溶媒の蒸発スピードが遅いためソーキングに時間がかかる傾向にある。 特にテルペンについては、4つの類縁体のうち測定が完了していない3つの類縁体について結晶スポンジ法の測定が終了次第、論文化し本研究について発表する計画である。
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