我々は、ヌクレオシドの5′位水酸基をヘテロアリールスルホニル基で置換したJulia-KocienskiスルホンをDBUなどの塩基で処理すると、ドミノ反応が起こり、核酸塩基が結合した光学活性シクロペンテンが生成することを見出している。加えて、チオールやチオカルボン酸の存在下本反応を行うと、核酸塩基がチオ基で置換されたシクロペンテンが生成することも見出した。本研究は、1)この新規ドミノ反応が5員環糖や6員環糖由来のJulia-Kocienskiスルホンに適用可能か、2) どの様な求核剤が導入可能か、の2点について検証し、幅広い光学活性不飽和環状炭化水素の立体選択的合成法へと発展させることを目的とした。 まず、D-リボースから誘導したJulia-Kocienskiスルホンと核酸塩基との反応の基質適用範囲の拡大を試み、種々のピリミジン、プリン塩基から目的とするシクロペンテン誘導体が得られることを見出した。加えて、得られたシクロペンテン誘導体の絶対立体配置を単結晶X線構造解析で決定した。次に、L-リボースなどのアルドペントース、グルコース、マンノース、ガラクトースなどのアルドヘキソース、プシコースなどのケトースを出発物質とするJulia-Kocienskiスルホンの合成を達成すると共に、ドミノ反応が同様に進行し、チオ酢酸などの求核剤が導入されたシクロペンテン、シクロヘキセンが生成することを見出した。最後に、得られたシクロペンテン、シクロヘキセンの誘導化に取り組み、種々の多置換シクロペンテン、シクロペンタン、シクロヘキセン、シクロヘキサンへと立体化学的な純度を損なわずに誘導できることを見出した。
|