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2021 年度 実施状況報告書

広範囲な分子の立体構造解析を目指した円二色性スペクトルの実験・理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K05413
研究機関広島大学

研究代表者

根平 達夫  広島大学, 統合生命科学研究科(総), 准教授 (60321692)

研究分担者 松尾 光一  広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (40403620)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード円二色性 / 量子化学計算 / 絶対立体配置
研究実績の概要

分子の立体構造の観測法として汎用性の高い円二色性(CD)の適用範囲を、可能な限り広げることを目指して本年度から研究を開始した。まず、理論的な検討を進めるための研究環境が計算サーバーの故障のため使用不可となっていたので、量子化学計算の計算機環境を再構築した。次に、蛍光検出円二色性(FDCD)理論の再定義するため、FRETの関与を証明するモデル分子の基本構造として、キラルドナー部/物差し部/アキラルアクセプター部、の3つからなるハイブリッド分子を設計した。このうち「物差し部」を6-アミノヘキシル酸のオリゴマーと定め、連結する数によって長さを段階的に変えられる合成戦略のために必要な保護基導入の反応を行った。この反応は文献既知であったが再現性が著しく低かったため、反応の条件を見直して大量合成を可能にした。関連研究として、得られた6-アミノヘキシル酸の保護体を次のように酵素の基礎研究に応用した。酵素活性を蛍光強度で測定できる分子と酵素活性を阻害する分子に対して、いずれも6-アミノヘキシル酸を介して基質認識部を連結させた。得られた新しい分子はいずれも、酵素を用いた試験管内での実験において基質特異性が大幅に向上した。また、真空紫外領域のCDスペクトルをキラルアレンの構造解析に応用するため、置換基の異なる様々なモデルアレンの合成に展開可能な合成ルートを確立した。この合成ルートでは、鍵中間体のキラリティー制御が重要と考え、いくつかの例についてプロパルギルアルコールをジアステレオマー法により光学分割する汎用的な方法を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の大目標を、分子の立体構造の観測法として汎用性の高い円二色性(CD)の適用範囲を、可能な限り広げること、と定めた。この実現のために、①量子化学計算に基づくスペクトルの理論的予測に際しても目的化合物の特性別ガイドラインの体系化、②蛍光検出円二色性(FDCD)理論の再定義、③構造解析にCDスペクトルを適応できる範囲を短波長領域にも拡大、という3つの命題を設定した。
①に関しては申請者が所有する理論計算サーバーが故障により全く機能しなくなっていたので、本研究により計算環境を再構築した。
②については、FDCDでは分子内のドナー発色団周辺のキラル情報がFRETによってアクセプター蛍光発色団へと伝播する様子を観測している、と考えた。これを証明するモデル分子として、キラルドナー部/物差し部/アキラルアクセプター部、の3つの部位からなる分子系を設計した。長さを系統的に調整できる「物差し部」として6-アミノヘキシル酸のオリゴマーを選び、再現性が著しく低い既報の保護基導入の反応条件を徹底的に見直し、これを改善した。安定供給することが可能となった6-アミノヘキシル酸の保護体を、酵素の研究にも応用した。酵素活性を蛍光強度で測定できる分子と酵素活性を阻害する分子に対して、いずれも6-アミノヘキシル酸を介して基質認識部を連結させ、試験管内での実験で、酵素に対する基質特異性が大幅に向上することを示した。
③については、キラルアレンの絶対立体配置に注目した。本研究に先立ち、真空紫外領域のCDの符号がキラルアレン部分の絶対配置を反映することを、いくつかの例で示した。本研究では、様々な置換基をもつキラルアレンの系統的なライブラリー合成を目指した。キラルアレンの合成で鍵となる2種類のプロパルギルアルコールを、それぞれの鏡像体を純度良く得る方法を検討し、ジアステレオマー法による光学分割に成功した。

今後の研究の推進方策

以下の3つの命題それぞれについて、以下のように研究を推進する。命題は互いに関連しているので、可能な限り並行して進める。
[命題1]CDスペクトルを計算予測するためのガイドライン作成: 天然物化学者や合成化学者との共同研究を通して、様々な分子構造のCDスペクトルを量子化学計算し、分子構造と計算条件の適性データを蓄積する。分子構造を官能基ごとに分類し、それぞれの場合の計算条件を、溶媒効果、汎関数、基底関数の3点について代表的な手法による結果を実験スペクトルの再現性を基準に比較する。時間のある限り、CDスペクトルの総説なども参考にしながら、化合物に応じた計算ノウハウを体系化する。
[命題2]FDCDで観測できる構造の明確化: 単純な励起子キラリティー系としてtrans-シクロヘキサンジオールを選び、有機小分子においてFDCD = CDとならない系を系統的な合成モデルにより解析し、古典的なFDCD理論式を再定義する。また、FDCDの観測機構の一つとされているFRETを想定したモデル化合物系を系統的に合成してFDCDを精査し、「巨大分子内での局所構造」を帰納的に定義する。FRETモデルの基本骨格を、キラルドナー部/物差し部/アキラルアクセプター部からなるハイブリッド分子とする。物差し部は炭素鎖4-6程度の単純分子の連結とし、連結数によって長さを変えながらいくつかのモデルを合成する。
[命題3]VUVCDによる新しい絶対配置決定法の開発: 天然物にも見られる部分構造で、しばしば構造決定が難航するキラルアレンについて検討する。キラルブロモアレン合成の鍵中間体であるキラルプロパルギルアルコールを光学分割する汎用的な方法として、キラルフタル酸の適用を検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)

  • [雑誌論文] CaM kinase phosphatase (CaMKP/PPM1F/POPX2) is specifically inactivated through gallate-mediated protein carbonylation2022

    • 著者名/発表者名
      Akizuki Kazutoshi、Ishikawa Shun、Obatake Rika、Ozaki Hana、Shimoda Nao、Nehira Tatsuo、Yamazaki Takeshi、Kinumi Tomoya、Osawa Jin、Sueyoshi Noriyuki、Kameshita Isamu、Shigeri Yasushi、Ishida Atsuhiko
    • 雑誌名

      Archives of Biochemistry and Biophysics

      巻: 720 ページ: 109170~109170

    • DOI

      10.1016/j.abb.2022.109170

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Janohigenins: Long-chain anacardic acid derivatives with neuroprotective activity from Ophiopogon japonicus seeds2021

    • 著者名/発表者名
      Ohta Shinji、Takeda Manami、Ohta Emi、Nehira Tatsuo、Omura Hisashi、Uy Mylene M.、Ishihara Yasuhiro
    • 雑誌名

      Phytochemistry

      巻: 191 ページ: 112904~112904

    • DOI

      10.1016/j.phytochem.2021.112904

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Detection of allelopathic activity of Chinese tallow Triadica sebifera (Euphorbiaceae) by the sandwich method2021

    • 著者名/発表者名
      Ze-Peng Sheng, Amu Nakai, Yoshiki Koyama, Tatsuo Nehira, Hiromi Tsubota
    • 雑誌名

      Hikobia

      巻: 18 ページ: 157-163

    • 査読あり / 国際共著

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公開日: 2022-12-28  

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