研究実績の概要 |
1. 環状イミノニトリルと鎖状エノンとの不斉共役付加反応とこの生成物のスピロピペリジンへの変換 研究者が独自に開発した酢酸銀/ThioClickFerrophos(TCF)錯体を触媒に用いて,環状イミノニトリルとα-エノンとの反応を行うと共役付加反応が収率良く進行した。イミノ基と側鎖置換基の立体化学がほぼ単一であるジアステレオマーが生成していることがNMR測定から明らかとなった。エナンチオマー過剰率はキラルHPLCを用いて決定し,最大97% eeの鏡像体過剰率で光学活性体を得ることに成功した。反応の収率や立体選択性に対する環状イミノニトリルの置換基やα-エノンの電子的および立体化学的性質に対する影響は限定的であり,反応基質の適用範囲は広く,チオフェンなどのヘテロ環および脂肪族化合物も使用できた。生成物のニトリル基はRaneyニッケルを触媒に用いて立体化学保持で水素還元され,対応するスピロピペリジンが生成した。これはピロリジンとのハイブリッド型 のスピロ環である。 2.アゾメチンイリドとイリデンコハクイミドとの不斉(3+2)環化付加反応によるスピロピロリジンの合成 独自の酢酸銀/TCF錯体を用いて,グリシンイミノエステルとα-アルキリデンコハク酸イミドとの不斉(3+2)環化付加反応によるスピロピロリジン合成を研究した。反応は,温和な条件下で高いジアステレオおよびエナンチオ選択性(最大95% ee)で進行し,endo-(2,5-シス)スピロピロリジンを良好な収率で与えた。この反応には、ヘテロアリール基や電子供与基や電子吸引基を有するフェニル基など多種多様なイミノエステルが利用できる。α-アルキリデンコハク酸イミドの範囲を検討したところ、α-アルキリデン誘導体の置換基は収率や立体選択性にほとんど影響せず、α-アルキリデン誘導体は求双極子として汎用的に使用できることが明らかになった。
|