研究課題/領域番号 |
21K05417
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
服部 恭尚 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (20567028)
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研究分担者 |
今野 博行 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50325247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COVID-19 / SARS 3CLプロテアーゼ / 阻害剤 / デカヒドロイソキノリン |
研究実績の概要 |
重症急性呼吸器症候群 (Severe Acute Respiratory Syndrome、SARS) は、21世紀初の新興感染症であり新種のコロナウィルス (SARS-CoV-1)が発症の原因である。2019年末より流行を繰り返しているCOVID-19の原因ウイルスは同種のSARS-CoV-2であり、ワクチンの開発は進んでおり、いくつかの治療薬は使用可能になっている。しかしながら、いずれの治療薬も制限が多いのが現状である。SARS CoVの増殖にはSARS 3CLプロテアーゼ が必須であり、本酵素の配列および立体構造は両ウイルスで酷似している。従って、SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤は有望な抗SARSならびに抗COVID-19薬の標的となりうる。 本研究課題では、既に報告したSARS 3CLプロテアーゼの基質配列に基づくペプチド型阻害剤から構造展開した低分子型阻害剤であるデカヒドロイソキノリン型阻害剤の合成を第一段階の目標としている。まず、活性向上の鍵となるデカヒドロイソキノリン骨格4位の置換基導入の足掛かりとなる置換基の導入を検討した。しかしながら、予想に反して置換基導入の収率は中程度に留まり、また再現性も得られなかった。したがって、本合成を一旦中断して別途、分子設計していたデカヒドロイソキノリンのアミド置換基を移動した阻害剤候補分子の合成を進めることとした。その結果、阻害剤候補分子の合成は概ね順調に進行し、アルデヒドに代わる相互作用基として有望なジチオアセタールを有する化合物まで合成が完了している。 これらの結果について、日本薬学会第142年会(名古屋、オンライン開催、講演要旨集27PO4-pm2-10S)にて発表した。また、本研究課題に深く関連する内容について、日本農芸化学会2022年度大会(京都、オンライン開催、講演要旨集4F07-11)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、4位置換基を有するデカヒドロイソキノリン型阻害剤の合成は一旦中断している。活性向上に有望と考えているデカヒドロイソキノリン骨格4位への置換基導入の足掛かりとなる置換基としてシアノ基またはメチルニトロ基を選択して種々の条件検討を行った。これまでの条件検討の中である程度の方向性は見えてきているが、収率と再現性の課題が残っているためである。 一方、合成がうまくいかなかった場合の対応として、既に報告しているデカヒドロイソキノリン型阻害剤のデカヒドロイソキノリン環上のアミド置換基を1位に移動した阻害剤候補分子も別途設計していた。本阻害剤候補分子の合成は概ね順調に進んでおり、目的とするアルデヒドを有する阻害剤の前駆体であるジチオアセタールを有する化合物まで合成が進んでいる。 ジチオアセタール自体もアルデヒドに代わる有望な相互作用基であることを既に報告している。したがって、ジチオアセタールを有する化合物もSARS 3CLプロテアーゼ阻害活性評価を行う意義があるためである。
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今後の研究の推進方策 |
合成に成功しているジチオアセタールを有する化合物であるが、量が不十分で全てのスペクトルデータを取得するところまで進めていない。2022年度はまず、このジチオアセタールを有する化合物の再合成による化合物量の確保を目指す。量が確保できれば、化合物データも問題なく取得可能であり、アルデヒドへの変換も可能となる。ジチオアセタールを有する化合物については、SARS 3CLプロテアーゼとの共結晶構造解析をできていないため共結晶作製を行う。 中断している4位置換基を有するデカヒドロイソキノリン型阻害剤の合成については、上のジチオアセタールを有する化合物を共結晶作製している間にこれまでの条件検討の結果を踏まえて収率改善と再現性の確保を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
配当いただいた共同研究資金の使用期限が延長されたため、当初予定していた使用金額よりも大幅に減少した。翌年度請求分と合わせて、試薬や器具などの購入に充てる予定である。
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