茶の生葉から製造される紅茶は、製造過程でその成分が大きく変化することが知られている。特に生葉中に含まれるカテキン類は、酸化的に重合しテアルビジンとよばれる高分子化合物に変換される。しかしながらテアルビジンの化学構造はいまだ明らかになっていない。本研究では、紅茶テアルビジン類の構造解明をめざし、紅茶加工中における成分変化を「化学反応」と位置付け、反応中間体の構造やその反応性を明らかにすることを目的に研究を行った。茶の生葉を原料として紅茶の試験加工を行い、段階ごと(萎凋、揉捻、発酵、乾燥)にサンプリングしLC/MSにて分析した。得られたデータを用いた多変量解析の結果から、製造過程の進行とともに増加している化合物を抽出した。これらの化合物は、揉捻・発酵過程でカテキン類が減少するのとは反対に揉捻・発酵過程にかけて増加していた。さらにこれらのピークについてLC/MS/MS解析を行ったところ、カテキン類に特徴的なフラグメントパターンが観察されたことから、テアルビジン生成中間体の候補化合物であると考えている。これらの化合物のうち1種について、MS/MSパターンから材料となるカテキンを特定し、酸化反応を行った。その結果LC/MSにより一致する化合物が得られた。得られた化合物について構造を同定した。得られた化合物は、再度酸化反応に供することで2種の化合物が生成し、そのうち1種については、逆相系HPLCにおいてテアルビジン様のブロードなピークとして観察された。
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