研究課題/領域番号 |
21K05423
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮崎 義之 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40380779)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多糖類分別定量分析 / キャピラリーゲル電気泳動法 / 硫酸化多糖類 / 食品機能性 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
天然物由来の多糖類は、健康維持に有益な生理活性を有することが多くの研究において報告されているが、高分子構造を保った多糖類を識別定量する分析法は未だ確立されていない。そのため、当食品素材の品質および機能性を適切に評価することが出来ない。そこで本研究では、天然硫酸化多糖類を食品として安全かつ効果的に利用可能なものとするため、キャピラリーゲル電気泳動装置を用いた硫酸化糖の分別定量法の開発と海藻由来硫酸化多糖類フコイダンの生理機能解析を進めている。 2021年度は、キャピラリー電気泳動装置Wesを用いた硫酸化糖の新規分別解析法を確立するため、電気泳動に供するための試料前処理法および泳動条件の検討を行った。また、フコイダンの機能性検証のため、マウス腸管免疫細胞とフコイダンの結合性の評価、マウス骨髄樹状細胞およびマクロファージ様細胞株を用いた機能性の検証を行い、マウス腸管におけるフコイダンと単球・リンパ球との相互作用および樹状細胞・マクロファージの活性化作用を明らかにした。作用機序の解明に向けて、フコイダンの部分分解物を調製し、免疫機能制御における機能性と多糖構造との相関解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キャピラリー電気泳動装置Wesを用いた硫酸化多糖の新規分別解析法の確立を目的として、2021年度は先ず、既存の電気泳動プロトコールを適用して硫酸化オリゴ糖の分析条件を検討した。既存のプロトコールは、タンパク質の分子量分画と検出のために構成されており、硫酸化糖の定量解析系を構築するには至らなかった。実験計画の遅れを取り戻すべく、継続して分析条件の至適化を試みている。 フコイダンの機能性解析については、腸管リンパ組織から単離した単球・マクロファージおよびリンパ球との相互作用を確認するとともに、培養試験において、マクロファージの活性化を制御するために、一定の構造を有した糖鎖がtoll-like receptorなどの異物認識受容体と協調して働くことを明らかにした。今後引き続き、フコイダンの糖鎖構造に基づく免疫細胞機能制御の作用機序について解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
キャピラリー電気泳動装置Wesによる硫酸化オリゴ糖の分子量分画および定量的検出を可能とする分析条件の設定を行う。また、本法をフコイダンの解析に適用するため、各種海藻由来のフコイダン標品およびその分解物を調製し、検体前処理法を含む至適分析条件を検討する。 フコイダンによる腸管免疫調節機構を明らかにするため、マウス樹状細胞およびマクロファージ培養細胞を用いて、フコイダンおよびフコイダン分解物による免疫細胞機能制御の作用機序を検証する。また、フコイダンの機能性構造単位を明らかにするため、Wes、質量分析計およびNMR等を用いた糖鎖構造の解析に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に基づいて約7割を使用しており、必要に応じた助成金の適切な使用が出来たものと判断している。本次年度使用額については、2022年度において研究試薬などの物品費として使用するものとする。
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