研究課題/領域番号 |
21K05425
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研究機関 | 静岡英和学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
庄司 豊 静岡英和学院大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80453546)
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研究分担者 |
五十嵐 美樹 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, 研究員 (70340172)
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (70438191)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CSAD / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / NAFLD / 肝がん / タウリン |
研究実績の概要 |
肥満関連の疾患の一つである非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を起因とする肝がんが増加している。我々は、その発症のメカニズムを知ることを目的として高脂肪食負荷マウスの脂肪肝とマウスの化学誘導肝がんの遺伝子発現データを用いてメタ解析を行い、肝機能を正常に保つ作用を持つタウリンの生合成律速酵素であるcysteine sulfinic acid decarboxylase (CSAD)遺伝子の発現が低下すること、さらにヒト肝癌におけるCSADの発現レベルと生存率が正相関にあることを見出した。本研究では、高脂肪食負荷によるNAFLDの発症、続く肝発がんとCSAD遺伝子の関連性を調べ、予防や治療へ応用可能な栄養・食品成分を探索する。 初年度は、試験に使用する動物作成と組織採取を行った。C57BL/6J雄マウスにストレプトゾトシン(STZ)を単回投与して低インスリン状態とし、その後高脂肪食を与えて後期2 型糖尿病の病態をしめすSTAMマウスを作成した。STAMマウスは段階的に脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH;6 週)、肝線維化(10 週)を経て、16 週目で肝細胞癌(HCC) を発症する肝発がんマウスモデルである。実験は以下の4つの群で行った(CN群:STZ非投与・AIN-76摂取、CH群:STZ非投与・HFD32摂取、SN群:STZ投与・AIN-76摂取、SH群:STZ投与・HFD32摂取)。これら4群の給餌は自由摂取とし、4,6,10,16週齢で解剖を行い、肝臓を採取した。体重はコントロール群(CN、CH)と比較しSTAM群(SN、SH)で低値傾向であり、摂餌量は各群大きな差はなかった。空腹時血糖値はSH群で10週齢以降有意に高値を示し、後期2 型糖尿病様の変化を確認した。16週齢STAM群においては肝臓に腫瘍が認められた (SN: 36%、SH: 83%)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年4月より所属が変更となり、初年度は研究環境の整備等に時間が取られることが多かった。現在、研究環境は少しずつ整いつつある。研究計画に従い、動物実験に着手し、必要な動物の作製とサンプル採取を行うことができた。今後行う遺伝子解析などの準備も進め、一方細胞実験に必要なベクターの準備なども進めた。初年度については、ほぼ予定通り研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は主に初年度に作成したSTAMマウスの肝臓サンプルの解析を進める。STAM マウス各病態(NASH, 繊維化、HCC)での肝臓組織についてCSAD 遺伝子発現を確認する。また、CSADや肝臓の病態に関連するいくつかの遺伝子(例えば肝がんで増加するANXA2遺伝子、肝臓の線維化に関連するTGF-βなど)の発現についても調べる。 さらに、ヒトの肝がん細胞株(例えば肝がん細胞HepG2や不死化肝細胞など) をもちいて、CRISPR/Cas9 ゲノム編集技術でCSAD 遺伝子欠損株の樹立を行う。細胞の遺伝子発現や代謝物などの解析、タウリン添加試験などを行うことで、肝発がんとCSAD遺伝子の関連性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の所属変更により、研究計画当初には購入する必要がないと思われていたリアルタイムPCRを購入することとなった。その購入費用として70万円の前倒し請求を行った。購入したリアルタイムPCRが思いの外、高額でなかったため、その残金が約30万円ほど来年度への繰り越し額となった。
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