研究課題/領域番号 |
21K05427
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
厚味 厳一 帝京大学, 薬学部, 教授 (70276608)
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研究分担者 |
石橋 賢一 帝京大学, 薬学部, 助教 (00707458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂肪酸 / ステアリン酸 / 脂肪細胞 / 細胞内輸送 / リン脂質 |
研究実績の概要 |
細胞外のステアリン酸濃度に応じた、小胞の細胞内輸送の変化に着目して研究を進めているが、2021年度は、細胞外ステアリン酸濃度と細胞膜リン脂質結合ステアリン酸濃度との関連をまずは調べた。その結果、ステアリン酸が細胞外に多い状態で細胞内に増加する特定のリン脂質分子種の存在を明らかにした。パルミチン酸での検討と比較し、脂肪酸の合成に関わる酵素(SCD-1, Elovl6)とリン脂質の前駆体に脂肪酸を結合させる酵素(LYCAT, LPCAT1)の関与が示唆され、これらの酵素に注目して進める必要がある。また、細胞から分泌される膜小胞(マイクロパーティクル)に含有するリン脂質と細胞膜リン脂質組成との関連を、培養脂肪細胞を用いて脂肪酸に着目して調べた。細胞を回収することなく、細胞膜のリン脂質に結合した脂肪酸の簡便なモニタリング方法となりうるのではないかと考えて検討した。しかし、マイクロパーティクルの組成と細胞膜の組成は相関がなく、マイクロパーティクルによるモニタリングは難しい可能性が示唆された。ただし、マイクロパーティクルでは、飽和脂肪酸を含有したリン脂質の割合が多いことが明らかになったので、細胞膜の特定部分からの分泌が想定できる。 次に、小胞輸送におけるリン脂質結合脂肪酸の役割について、脂肪細胞でのインスリン刺激による糖の取り込みを指標に調べたところ、不飽和脂肪酸が結合したリン脂質の減少と飽和リン脂質が結合したリン脂質の増加が、インスリンに対する応答性を悪くすることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベクターを作成し、ノックダウン細胞や過剰発現細胞の構築を目指していたが、遺伝子組換え実験の学内審査に予想以上に時間を要し、ベクターの作成への着手が遅れた。また、購入予定であったベクターが、供給元の都合により、数か月先まで手に入らないことが明らかになり、組換え実験の申請書を別のベクターで作り直したため、さらに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
ベクターを作成し、細胞株の樹立を目指す。また、細胞外のステアリン酸濃度の変化と細胞膜のリン脂質に含有したステアリン酸量の変化との関連が明らかになりつつあるので、細胞内でのAKTやGLUT-4の輸送との関連を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組換え申請の承認に時間を要したため、細胞株作成の着手が遅れ、細胞関連の費用が発生しなかった。次年度に繰り越した。
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