研究課題/領域番号 |
21K05429
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
福島 英登 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60466307)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | リコンビナント・パラミオシン / イカ肉加熱品 / 筋肉タンパク質の分解 |
研究実績の概要 |
アカイカおよびアメリカオオアカイカのパラミオシンをコードする塩基配列を大腸菌のコドン頻度に合わせ、これらを含む全長2,586 bpおよび2,652 bpの配列を大腸菌の発現用pETベクターに組み込んだ(ObPm-pET11aおよびDgPm-pET11a)。これを用いて発現用大腸菌BL21(DE)を形質転換し、リコンビナント・パラミオシン発現用大腸菌を作製した。発現用大腸菌を所定の条件で培養後、37℃、3時間の条件でIPTGによる発現誘導したところ、目的サイズにタンパク質が発現することを確認した。一方、この条件で発現誘導した菌体を超音波破砕しても、発現タンパク質を回収することができず、発現条件や回収方法を検討する必要があった。次年度は発現誘導した大腸菌からのリコンビナント・パラミオシンの調製方法を確立するとともに、リコンビナント・パラミオシンの大量調製を試みる。 イカ肉の高度利用方法の1つとして、イカ肉に内在するプロテアーゼを活用したイカ肉加熱品の製造方法を検討した。既報の魚肉すり身のペースト化を参考に、加温温度(35~50℃)および時間(~40時間)、食塩の添加量(0.5~2.5 %)を変えたイカ肉加熱品を複数の条件で作製し、筋肉タンパク質の分解と物性の変化を評価した。筋肉タンパク質のうち、ミオシンの分解は食塩の添加量が多いほど早く進行し、上記のどの条件でも確認された。一方で、パラミオシンは最長40時間の加温でも完全には分解せず、内在性プロテアーゼのみではパラミオシンを十分に分解させることはできなかった。今後は酵素製剤の使用も視野に、筋肉タンパク質の分解ならびにイカ肉加熱品の物性を低下させる条件を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に計画していたリコンビナント・パラミオシン発現用の大腸菌pETシステムを構築した。構築した発現ベクターで形質転換した発現用大腸菌BL21(DE3)を培養し、IPTG誘導することで目的のリコンビナント・パラミオシンが発現することを確認できた。また、イカ肉加熱品の物性を低下させる各種加工実験も行っており、おおむね当初の予定通り進捗できている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、昨年度に構築した大腸菌の発現系を用いて、リコンビナント・パラミオシンを大量に調製する方法を確立する予定である。また、イカ肉からパラミオシンを大量に精製する実験に着手するとともに、筋肉タンパク質の分解挙動を調べつつ、イカ肉加熱品の物性を低下させる加工方法の検討を引き続き行うなどして今後も予定通りに課題を進行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、研究室内での実験で予定していた実験試料、試薬類、ガラス器具類、プラスティック器具類はおおむね予定通りに使用した。一方でコロナ禍により、学会が開催されなかったりオンデマンド開催となったこと、研究打合せの出張が制限されたことなどで国内旅費を使用しなかったことから、次年度の使用額が生じた。令和4年度は、従来予定していた実験や学会発表での使用に加え、研究打合せや学会参加の機会を増やし、多くの専門家と意見交換しながら研究を進める予定である。
|