研究課題/領域番号 |
21K05435
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
升本 早枝子 福島大学, 食農学類, 准教授 (30596052)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリフェノール / 発酵 |
研究実績の概要 |
発酵工程モデルによる重合ポリフェノールの合成およびその構造を明らかにすることを目的として実験を実施した。 ワイン発酵工程モデルとして、カテキン、エピカテキン、アントシアニンをアセトアルデヒドに添加して反応させ、ワインに特徴的に含まれるEthyl-linked anthocyanin-flavanolやEthyl-linked flavanolなどを合成する条件を検討した。さらに、ウーロン茶発酵工程モデルとしてエピガロカテキンおよびエピガロカテキンガレートをポリフェノールオキシダーゼを加温条件下で反応させ、テアシネンシンなどのウーロン茶に特徴的に含まれるポリフェノールをの合成および条件検討を行った。ワイン発酵工程モデルおよび烏龍茶発酵工程モデルともに、生成された重合ポリフェノールを簡易カラムを用いてメタノール抽出を行い、得られたポリフェノール画分をHPLCおよびLC/MSにより分析を行った。ワイン発酵工程モデルにおいては、3種類の重合ポリフェノールの産生が確認されたが、産生量が極わずかであった。また、添加するポリフェノール類の割合や添加量によって産生される重合ポリフェノール量と種類が大きく変動することから、今後の動物試験に適応出来うる産生量を合成出来るモデル条件の再検討が必要と考えている。烏龍茶発酵工程モデルでは、反応時間および軽微な温度の違いにより、産生される重合ポリフェノールのバリエーションが異なる為、安定的に同様の重合ポリフェノールを得られる条件を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる影響で、発酵工程モデルの反応物質となるポリフェノール類や有機溶媒など試薬類の入手が大幅に遅れたことで、試験開始時期が遅れてしまった。さらに、モデル発酵による重合ポリフェノールの産生量が当初の予測よりも少なかったことや、安定的に同じ種類の重合ポリフェノールを一定量得られる再現性のあるモデル条件が定まらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ワイン発酵工程モデルおよび烏龍茶発酵工程モデルのいずれにおいても、出発物質となるポリフェノールの種類および量、さらに温度や日数などの反応条件の検討を早急に行い、安定的に同じ種類の重合ポリフェノールを一定量得られる再現性のあるモデル条件を早急に決定し、得られた重合ポリフェノールをLC/MSおよびNMRにて構造解析する。 ワイン発酵工程モデルおよび烏龍茶発酵工程モデルの重合ポリフェノールをそれぞれ動物試験に対応可能な量まで合成を行い、合成した重合ポリフェノールをB6J Agedマウスに与え、飼育する。認知機能の評価として、飼育開始時、15、18ヶ月齢に、受動回避、空間作業記憶(Y字迷路)、新規物質探索行動について試験する。さらに盲腸内容物から得られたDNAを鋳型とし、16SrRNA遺伝子領域をPCRにて増幅し、得られた精製DNAを用いて次世代シークエンサーにより腸内細菌叢の解析を行う。得られたデータから菌叢組成解析および多様性解析を行う。 また同時に、腸管内皮細胞を用いた腸管内モデルを用いて、腸管内のバリア機能の変動の作用機序を遺伝子解析により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、出張による打ち合わせが出来なかったこと、また実験の本格的な開始が遅れてしまい、実験の進捗が遅れた為、使用額に差額が生じた。次年度以降、動物実験を実施する為、多くの重合ポリフェノールを合成するための溶媒の購入およびポリフェノール画分抽出用のカラムの購入、動物実験実施に関連する餌料および測定器具の購入に使用する。
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