大豆イソフラボンの大部分は吸収されにくい配糖体として存在し、吸収率の向上には腸内細菌が産生するβ-グルコシダーゼによる糖の分解が不可欠である。本研究は、申請者が植物性食材から単離したイソフラボン配糖体分解能が高い乳酸菌株を用い、菌が産生するβ-グルコシダーゼの解析を通して配糖体分解能の高さの要因の解明を試みるものである。令和5年度は研究室保有株であるLeuconostoc mesenteroides KM3と令和4年度に分離したLeuconostoc pseudomesenteroides So1の2株の高分解能株を用い、β-グルコシダーゼの局在性と基質特異性を調べた。その結果、いずれの株でも配糖体非特異的酵素と配糖体特異的酵素が細胞壁に存在し、配糖体非特異的酵素は細胞壁に強固に結合しているが、特異的酵素は緩やかに結合していることを示唆する結果を得た。また、これらの酵素を単離精製し、構造や性質の違いを明らかにすることを試みたが現時点では成功していない。 本研究ではイソフラボン配糖体分解能が異なる乳酸菌株を用い、β-グルコシダーゼの解析を通して配糖体分解能の違いの要因の解明を試みた。合成基質であるpNPGとイソフラボン配糖体であるダイジンの2種類の基質を用い菌体の酵素活性を測定したところ、低分解能株はpNPGにしか活性を示さなかったが、高分解能株はダイジンに対しても活性を示し、高分解能株には配糖体特異的酵素が存在することを明らかにした。また、複数の高分解能株について酵素の局在性を調べた結果、配糖体非特異的酵素と配糖体特異的酵素はともに細胞壁に存在し、非特異的酵素は細胞壁に強固に結合しているが、特異的酵素は緩やかにしか結合していないことがわかった。本研究成果は、細菌によるイソフラボン配糖体の分解機構に重要な知見を与えるものと考えられる。
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