研究課題/領域番号 |
21K05438
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
足立 収生 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20027189)
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研究分担者 |
赤壁 善彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20274186)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 蒟蒻芋の食料化 / 膜結合型マンノース異性化酵素 / 高濃度果糖液の製造 / 蒟蒻芋の高度化利用 |
研究実績の概要 |
これまでに蒟蒻芋の加水分解法を研究して、蒟蒻芋麹の製造を行った。加水分解が困難であった蒟蒻芋はマンノースとグルコースの混液として新しい炭水化物素材として、また新規な発酵材料として評価できることを示してきた。これらの研究成果をさらに発展させるために、以下の研究を実施し望ましい研究結果に繋がった。 (1)酢酸菌の細胞膜に全く新規な細胞膜結合型マンノース異性化酵素(MMI)を見つけた。従来の糖質異性化酵素が例外なくアルカリ域で異性化反応を示すのに対し、MMIはpH 5-6の酸性域に最適反応pHを示したことは特筆される。また、従来報告されている糖質異性化酵素は例外なく細胞質に存在するのに対して、MMIは細胞膜と強固に結合して、培地側で機能する新しい形の異性化酵素であることも特筆される。MMIは酢酸菌細胞に生まれながらに固定化された状態であるので、種々な発酵工学・生物工学で経費を要することなく固定化触媒として応用することができる利点も示すことができた。固定化細胞を乾燥すると長期保存のできる触媒として繰り返し使用に耐えることも示した。 (2)蒟蒻芋の加水分解物中のマンノースにMMIを作用させると、マンノースは甘味の強い果糖へと約80%の変換率で転換された。人には不消化な蒟蒻芋がカロリー豊かな炭水化物へと加工・変換できることを初めて示すことができた。 (3)この研究成果を基盤として、山口大学からJSTの支援によって、国際特許(PCT)「D-マンノース異性化酵素及びD-フルクトースの製造方法」を申請することができた(R3年12月28日)。 (4)これらR3年度の研究成果を日本農芸化学会の学会誌、Bioscience, Biotechnlogy, and BiochemistryへR4年2月に投稿したところ、ひと月後のR4年3月25日に掲載・受理された。R4年度内に掲載される運びとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者と研究分担者が相互にそれぞれの持ち味を相補的に十分に発揮できているのが第一の理由である。 その結果、上記した膜結合型マンノース異性化酵素(MMI)が酢酸菌に初めて見つけることができたのが第二の理由である。 こうして研究の糸口を見つけることができたので、それぞれの引き出しのものを出し合うことで、今後の研究課題の進展も大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
蒟蒻芋の食料化した高度化利用には多くの道が開かれている。何よりも、蒟蒻芋について誰もそのような視点で蒟蒻芋を捉えることはなく、ひたすら食材のコンニャクとしての用途しか知らなかったからである。 今後の研究の推進方策として、(1)さらに異性化酵素反応の効率化と省エネ化を探求する。 (2)蒟蒻芋の高度化利用の一環として、MMIの作用で得られる果糖から5-ケトフルクトースを製造する。コカコーラなどの清涼飲料の糖質摂取過多に起因する肥満防止に有効な低カロリー甘味料として広い用途が待っている。 学術的には(3)5-ケトフルクトース分子をほぼ半分に開裂させるアルドラーゼを見つけることも重要である。糖質を基質とするアルドラーゼの多くはリン酸化基質と反応する酵素がほとんどであり、リン酸基を持たない物質を開裂させる酵素は極めて少なく、関係する科学分野の新しい開拓につながる。 (4)アルドラーゼ反応生生物として期待される、ジオキシアセトンとグリセルアルデヒドを特異的に還元する酵素を見つけて、それを使って非天然形の化成品の製造も視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
蒟蒻芋の調達が予定通りに進まなかった。作付け農家数が減少の一途にある山口県では、必要な材料を確保するためには早めに事前に作付け業者に予約する必要がある。通常3月中ばまでのようで、本研究の採否が判明する前であったために、初年度は間に合わなかった。このようなことは次年度以降には発生しないように努める。初年度は前年度までに別途調達していた備蓄材料を使って実施した。
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