研究実績の概要 |
多くの食品性植物に含まれる4代リグナンであるsecoisolariciresinol, laricireasinolの代謝物であるconidendrinの8個全ての立体異性体を高い光学純度での合成を行った。合成の出発原料にはEvansのanti-aldol縮合物を用いて立体収束的な反応を行った。本研究で用いた鍵反応は、立体選択的分子内SN1求核置換反応、脱離反応の後の立体選択的ハイドロボレーション、アルデヒド基のα位の塩基による異性化である。また、さまざまなベンズアルデヒド誘導体、ベンジルアルコール誘導体を用いて誘導体の合成も試みたが制限があった。まず、用いるラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞への細胞毒性を検討した結果、8つの立体異性体のうち、(+)-α-conidendrin、(-)-α-conidendrin、(+)-β-conidendrin、(-)-β-conidendrinに細胞毒性がないことが分かった。次に、500 μMで脱顆粒率を調べたところ、この4つの立体異性体のうち、(-)-β-conidendrinが51%であり、最も高い効果を示した。濃度との関係を調べると、125 μM、250 μMでも優位に脱顆粒効果を示した。次に、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞を用いて抗炎症作用を調べたところ、(+)-α-conidendrinでのみTNF-α産生(Fig.3-2-1)、およびIL-6産生(Fig.3-2-2)の有意な抑制が認められた。次に、マウス前駆脂肪細胞株3T3-L1細胞を用いて脂肪細胞分化抑制効果を調べると、(-)-α-conidendrin、(+)-β-conidendrinは細胞毒性を示すことなく脂肪細胞への分化を抑制することが示唆された。
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