研究課題/領域番号 |
21K05440
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
遠藤 弘史 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (30567912)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 食品成分 / 癌転移抑制 / 癌幹細胞 / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
現在の癌治療の解決すべき課題として,癌の転移および再発をいかに抑えることができるかという点がある.この問題に対して,我々は転移再発の原因となる癌幹細胞(CSCs),および,上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞に対して,食品に含まれる成分がどの様に作用するかを解析している. 当研究室ではこれまでに,腫瘍組織中の多くを占める上皮型癌細胞を抑制する効果のあるクルクミンやヘスペレチンが,CSCsやEMT癌細胞にも抑制効果を発揮することを見出している.この抗腫瘍活性はストレスタンパク質の転写因子として見出されたHSF1の抑制に基づくものであり,がんの原発巣である上皮型癌細胞の抑制と同時にCSCsやEMT癌細胞を抑制できる可能性が示唆される.このことについて詳細に解析を行うため,本年度は日本人に多い肺癌の細胞株であるA549と,大腸癌の細胞株であるSW480を用いた.これらの細胞株を低接着シャーレで培養することで,足場非依存的に生存する細胞を分離した.これらの細胞群はCSCsとEMT癌細胞が含まれており,この細胞群に食品成分のクルクミンまたは,ヘスペレチンを添加し,細胞生存率を測定した.この時,コントロールとして臨床で用いられる抗癌剤のシスプラチン(A549)または5-FU(SW480)を添加して比較した.その結果,食品成分には抗癌剤には見られなかった足場非依存性癌細胞の増殖を抑制する傾向が見られた. マウスを用いたin vivoの実験においても,皮下に上述の癌細胞を注入して腫瘍を形成させる担癌モデルの作成に成功しており,食品成分または抗癌剤投与の2群間での腫瘍サイズおよび転移巣の数の比較を始めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画としては,足場非依存細胞を用いた食品成分の細胞増殖抑制効果の評価とこれまでに我々が明らかとした,CSCsとその特性維持に重要な転写因子であるHSF1の機能解析が進んでいる.また,ABCトランスポーターによる抗癌剤耐性メカニズムの解析についてはポジティブなデータが得られていないが,その一方でC57BL6マウスを用いた担癌モデルの構築が進んでいる. 以上の事から,総合的にはおおむね順調に進呈していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については,研究計画調書に記載した通り,動物実験でのデータ収集を行う.また,細胞を用いた実験についても,CSCsやEMT癌幹細胞に対してどのような機序で食品成分がその特性を阻害するのかについて,我々がその原因であると考えるHSF1のノックダウンによる検討を重ねていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
CSCsを分取するためのキットが長期欠品となっていたために,次年度に繰り越しとなった. この繰り越しは予定通りキットを購入して研究を行う予定である.
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