研究実績の概要 |
カンピロバクター(C. jejuni)は、極めて高い運動性を有し、表面から食品内部へ移動することから、食中毒の防止にはC. jejuniの運動性を阻害することが有効である。本研究では、従来の2次元での細菌の運動性評価ではなく、濾紙を利用し食肉・食材中への移動を想定した細孔中での3次元条件下での運動性+バイオフィルム(BF)形成能の評価方法の確立を第一の目的とする。そして、この評価方法を利用し、C. jejuniの運動性の阻害に有効な天然抗菌物質等のスクリーニングを行う。2021年度においては、ろ紙を用いたC. jejuniの運動性の評価方法を検討した。 前培養したC. jejuniはCCDA培地に、大腸菌および枯草菌は普通寒天培地に前培養液を塗布し培養した。形成したコロニーに滅菌したニトロセルロース製のろ紙 (孔径: 0.2, 0.3, 0.45, 1.6, 20-25 μm)を1枚から11枚と重ねて置き、C. jejuniは微好気条件で、大腸菌および枯草菌は好気条件で培養した。 C. jejuniは、0.2~0.45 μmの孔を通りろ紙表面でBFを形成した。ろ紙上にC. jejuni が存在することも電子顕微鏡およびグラム染色により確認できた。さらに孔サイズ0.2μmでは1枚、0.3 μmおよび0.45 μmでは9枚までろ紙の孔を通り、BF形成することが可能であった。一方、大腸菌および枯草菌ではC. jejuniと異なり0.45 μmまでの孔サイズで移動できず、1.6 μm以上の孔サイズが必要であった。 以上の結果より、寒天を使用した2次元における評価では差がつきにくいC. jejuniと大腸菌、枯草菌の運動性をろ紙を使用することで差別化することができ、本法がC. jejuniの新たな運動性の評価方法として利用できる可能性が示唆された。
|