精神安定作用や血圧降下作用が報告されているγ-アミノ酪酸は、玄米の短時間の加熱・加温処理(催芽処理・GABA富化処理)によって増加するため、この特性を利用してGABA富化処理後の玄米から高GABA白米が製造されている。しかしながら、このような加工法に適したイネ品種についての知見は乏しい。そこで2023年度は、当研究室が保有している12系統群、73系統の突然変異系統を供試して、玄米、白米、GABA富化処理後玄米およびGABA富化処理玄米由来白米についてGABA含有量を計測し、GABA新生量またはGABAの胚乳への移行について突然変異系統間差を調査した。 GABA新生量に関しては、供試した12系統群中5系統群においてGABA新生量を増加させる突然変異遺伝子の誘発が示唆された。特にRC系統群では、GABA新生能に関して少なくとも2種類の遺伝子が分離していることが示唆された。一方、GABAの胚乳移行率では、12系統群中4系統群において胚乳移行率を高める遺伝子の誘発が示唆された。 以上のように、突然変異系統用いた調査では極めて高頻度にGABAの新生または胚乳への移行率に関する変異が観察された。一般的な突然変異の生起頻度を考慮すれば、この結果は、GABAの新生または胚乳への移行率に関与する遺伝子が多数存在することを示している。 GABAの新生に関しては、グルタミン酸から新規に合成される経路とGABA配糖体から分離される経路の存在が推定されるが、本研究で観察された反応の早さから、後者が主体ではないかと考えられる。本研究の成果は、新生されるGABAが何に由来するのかを含めて明らかにした上で、発表したいと考えているため、研究経費のうち発表に関する部分の経費を研究の遂行に充てた。
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