研究課題/領域番号 |
21K05458
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (90167479)
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研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (60164399)
鈴木 香 順天堂大学, 医学部, 助教 (90631929)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グルコサミン / 細胞老化 / DNA損傷 / p21 |
研究実績の概要 |
グルコサミン(GlcN)は関節機能の改善効果をもつ機能性食品素材として広く知られており、その効果を発揮する分子メカニズムとして炎症性サイトカイン産生の抑制による抗炎症作用が考えられている。炎症性サイトカインは細胞老化関連分泌形質(SASP)因子でもあり、老化誘導にも深くかかわっていることが知られている。そこで本研究課題ではGlcNの新たな機能として抗老化作用に着目し、細胞を用いたin vitro実験から動物を用いたin vivo実験の計画を立案した。令和3年度は細胞老化に対するGlcNの効果を調べるため、in vitro系による基礎実験を中心に行った。 細胞はこれまで申請者らがGlcNの効果や、細胞老化研究で使用してきたヒト滑膜細胞株MH7Aおよびヒト臍帯静脈内皮細胞および、細胞老化研究に広く使われているヒト肺癌由来細胞株A549やヒト乳腺癌由来細胞株MCF7を候補として検討した。また老化マーカーとしてX-gal染色による酸性βガラクトシダーゼ(SAβ-gal)活性とp21の発現量を調べた。その結果A549細胞が過酸化水素、エトポシド(トポイソメラーゼII阻害剤、DNAを損傷)、Nutlin-3a(p53阻害タンパク質MDM-2の阻害剤)により、老化細胞特有の細胞形態ならびに、SAβ-gal活性およびp21発現量の上昇が確認され、老化誘導系を確立した。そして、これら老化細胞に対するGlcNの影響を調べた。その結果、GlcNを前処理から老化誘導中の期間に加えることで、エトポシドで誘導されるp21の発現上昇が抑えられることが分かった。したがって、GlcNはDNA損傷からp21の発現上昇を伴う細胞老化を抑制する効果があることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vitro実験で使用する細胞および細胞老化誘導方法を確立するのに時間を要した。また老化細胞と、老化誘導剤で同時に起こる細胞死を分離するため、老化誘導剤除去後、一定期間(現時点では1週間に設定している)の培養を必要とするため、実験に時間を要している。そのため実験に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
GlcNがA549細胞のエトポシドを用いたDNA障害でおこる老化を抑制する可能性があることが分かった。しかし、細胞老化の指標として使用したX-gal染色によるSAβ-gal活性法では定量が乏しかった。そこで蛍光色素を用いた感度ならびに定量性に優れたSAβ-gal検出法を確立し、GlcNに対する影響を検討する。またGlcNの抑制効果発現には、前処理または後処理のどちらが重要なのかを検討する。さらに細胞老化にはタンパク質の凝集の関与していると考えられているので、タンパク凝集に対するGlcNの効果も検討する。そして細胞老化の誘導条件が確立したら、質量分析法によるタンパク質発現やリン酸化に及ぼすGlcNの影響を網羅的に調べる予定である。また今後の進捗状況に応じてMCF7細胞を老化させる実験系も導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:細胞老化誘導方法を確立するのに時間を要した。また老化マーカーであるSAβ-gal活性の測定法をさらに高感度かつ定量的にする必要がある。そのためターゲット分子の同定に必要な解析試薬ならびに、機能解析に必要な抗体や阻害剤等の購入経費が次年度に持ち越されることとなった。 使用計画:老化細胞検出用の蛍光試薬や抗体を購入予定である。また質量分析用試薬の購入ならびに分析料金に使用予定である。さらにGlcNで抑制される老化シグナルの解析に必要な阻害剤、siRNA, 発現プラスミド、遺伝子導入試薬の購入に使用予定である。
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