研究課題/領域番号 |
21K05464
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
吉井 英文 摂南大学, 農学部, 教授 (60174885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | りんご / 1-メチルシクロプロペン / シクロデキストリン / ポリスチレンボックス / エチレン / 徐放 / 2-メチルブタノール / 粉末 |
研究実績の概要 |
日本のりんごを東南アジアに輸出する際は、冷蔵船に梱包箱ごと乗せられ輸送される。現地で、冷蔵船より運搬車のコンテナに陸揚げされる時に梱包箱内の温度はステップ的に、4℃から室温に上昇する。このステップ温度変化により、りんごのエチレン受容体が活性化されエチレン発生によるりんごの熟成が加速する。そのため、りんご保蔵ポリスチレンボックス内でエチレン受容体結合阻害剤1-メチルシクロプロペン(1-MCP)をα-シクロデキストリンに包接させた粉末から1-MCPガスを徐放させることで、エチレン発生を阻害するしりんごの鮮度を維持することを目的とした1-MCP徐放性りんご鮮度保持梱包箱の開発を企図した。本研究では、りんご(ふじ)のエチレン発生を阻害するとりんごの香り発生も阻害されるので、りんごの香り前駆体2-メチルブタノールも1-MCP徐放する際同時に情報することでりんごの香りも維持しつつ鮮度保持したりんごを得るための貯蔵箱開発を実施している。 1)りんご(ふじ)を用いた鮮度保持実験 1-MCP粉末添加量を変化させた1-MCP粉末被覆包装紙入り梱包ポリスチレンボックス内のりんごの特質変化を、4℃保存15日、20℃保存15日後のりんごの特質、およびさらに室温で15日保存したりんごの特質を測定した。 2)りんご(王林)を用いた鮮度肘実験 1-MCP粉末添加量を50mg、および100mgに固定し、りんごを段ボール箱、およびポリスチレンボックス内に保存して、4℃保存15日、20℃保存15日後のりんごの特質、およびさらに室温で15日保存したりんごの特質を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ふじを、4℃で15日保存後20℃にポリスチレンボックスを保存した場合、ポリスチレンボックス内のエチレン濃度は20℃15日後まで直線的に増加しに65ppmまでになった。それに対して1-MCP粉末被覆紙(50mg、100mg)を入れた場合はポリスチレンボックス内のエチレン濃度は、ほとんどゼロでエチレン発生を抑えることができた。20℃で15日後のりんご(ふじ)のエチレン発生速度は、コントロールが26nL/gFW/hrであるにに対して、1-MCP粉末50mgのとき0.11、100mgのとき0.16とエチレン発生を抑制していた。硬さは、コントロールが66Nに対して、66、70Nと若干100mg1-MCP粉末被覆紙のときに硬くなっていた。酸度は、コントロールが0.25に対して0.28、0.3と若干高くなっていた。傷果の割合が、コントロールが0.063に対して0.013、0.013と低くなっていた。それが、更に20℃1か月の保存で、コントロールが傷果割合いが0.163であるにに対して0.091,0.043と低くなっていた。1-MCP粉末がりんご鮮度保持に役立っているのが確認できた。 王林の場合は、ふじ同様に4℃で15日保存後20℃にポリスチレンボックスを保存した場合、ポリスチレンボックス内のエチレン濃度は20℃に温度変化させてから6日後に450ppmまで増加し、それ以後減少しはじめ20℃変化御15日後約250ppmのエチレン濃度になった。それに対して1-MCP粉末被覆紙(50mg、100mg)を入れた場合、エチレン濃度を50ppm以下に抑制できた。20℃で15日後のエチレン発生速度がコントロールで136 nL/gFw/hrに対して、1-MCP粉末(50mg、100mg)で18,0.06とエチレン発生速度を抑制できた。硬さ、酸度もコントロールに比べ大きくすることができ、傷果も抑制できた。
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今後の研究の推進方策 |
りんごの種類により、1-MCPのエチレン発生挙動が異なり1-MCPの作用も異なる。1-MCP粉末被覆紙の効果も、温度変化後のエチレン発生速度、および硬さ、酸度の測定とともに、傷果の発生頻度や1-MCPによるエチレン発生を抑えすぎることによる変色に注意を払う必要がある。そのため、今後は、1-MCP粉末被覆紙による1-MCP発生挙動を的確に推定する手法、および1-MCP粉末被覆紙の位置による違い等を明確にする。そのため、以下の実験を行う。
1)りんごのない状態で、ポリスチレンボックス内での20℃、湿度90%における1-MCP発生挙動の測定の実施。コンパートメントモデルによる1-MCP発生速度、1-MCP消失速度の速度定数を求める。 2)りんごへの1-MCP吸着速度を、ふじ、王林で測定する。王林、ふじの貯蔵実験を、1-MCP粉末被覆紙とりんごが接触しない方法で検討する。 5)1-MCP粉末被覆紙の温度ステップによる徐放速度制御手法、香気成分前駆物質の徐放紙のりんご香気成分への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、2件の国際学会(環太平洋国際化学会議2021、およびThe 2nd International Conference on Chemical Engineering and Applied Sciences.)、日本食品科学工学会にWEB参加した関係で旅費として出費できず、また、ポリスチレンボックス内のガス濃度変化測定を実施するためのサンプラー構成が遅れたため、約22万の次年度への繰り越しがでた。今年度は、ガスサンプラーの作製、および学会参加(アジア太平洋化学工学連合会議)に参加発表予定である。
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