フレンチオークをチップ化した実験については10分のトーストについてデータをまとめ,Oeno One誌(ワイン関係の専門誌)に投稿し,受理された。本論文では,単糖類を含む相当量の糖類が樽からワインに抽出されることを示し,キシロースやグルコースが検出される事,トーストの温度が組成や抽出量に大きく影響を与えることを示した。分子量を比較するため,GPCと薄層クロマトグラフィーを行ったが,共存するポリフェノール類なども存在するため,また,解像度の問題などから十分な検討には至らなかった。 また,トースト時間が長くなると,抽出される糖の組成が変わることを明らかにした。現在,ワイン用に樽材のチップが市販されているが,詳細の研究はなされておらず,会社によりトースト温度や時間が異なっている。今回の実験は,今後,樽材チップを利用する上で,科学的知見を与えると思われる。 これらのトーストしたチップをワインに浸漬する予備的実験を行ったが,香りなどは明確な違いが見られた。また,国産の他の樹種が入手できたため,他の樹種についてもトーストした実験を開始した。糖類を中心に解析した結果,樹種により大きな違いが見られた。これらの結果について,今後論文化する予定である。 また,官能検査を行う際に,トースト時間などにより,抽出される溶液の粘性に違いが認められた。これらの「ディスク」としてワインの味を決定する重要な要因であるため,粘性に関する予備的試験をした結果,違いが認められた。これらについては,今後試験する予定である。
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